コロナ終息を願って

表紙の文字は「斷列」(断の旧字体)です。

斷の左側に幺の形が二列ずつ上下二段で四つもあります。

これは糸を染めるために縒った物を示しています。

それを織り機に掛けた状態のものを斤で裁断することが

「斷」の字形の説明になります。

そこから「断つ、切断する、滅ぼす」等の意味が発生したのです。

 新型コロナの蔓延を断ち切るという願いを込めてこの字を書きました。

たとえワクチンでコロナが抑えられたとしても、

以前のような日本を取り戻すにはとてつもない時間を要するでしょう。

なぜなら、とんでもない負の遺産が遺るからです。

それは何だと思いますか?

「大声を出すな、できるだけ会話はするな、手を繋ぐな、

人との距離を保て、ネットミーティングを…」などと言われ、

お隣さんとのちょっとした会話もままならず、人権は薄れ、

体得せずにバーチャルで済ませることが当たり前になった社会です。

「躬行性(自身で実際に行う姿勢)のない日本人」となり、

価値観が根本から揺らいでいます。

こうしたことを懸念して妻、清芳は、

癒しの心と衆生壽者の安寧を願って「薬師観音像」を彫りました。

昨年4月号から1年間、表紙を担当しました。

前任の近藤賢一氏は、全て新松戸界隈の街並みのスケッチでしたので、

私も自分の作品(書)が中心かなと思っていましたら、

編集者が私の小美術館で目にしたものは書家の文房具の珍しさだったとみえ、

筆、墨、印鑑、漆、硯、硯屏と風変わりな物が数多く登場しました。

そんな中で妻の仏像にも目を止め、

紹介していただいたことに感謝して筆を擱きます。