■俳諧「奴凧」

新茶出る香気佳味良し遠州路      佐藤 春生

鯉のぼり心の憂さを吹き流せ      吉沢緋砂子

切株に麻の座布団道の駅        鈴木 翠葉

鯉のぼり猫のひたいの庭に立つ     勝  太郎

押し寄せる緑の波にまどろんで     小林 今浬

こどもの日幸せさうに文句言ふ     松山 我風

■短歌「合歓の会」     久々湊盈子 選

七人掛けの座席の端に一人ずつ春の日ぬくし東武野田線         《選者詠》

漢方薬店に赤字の張り紙「フン注意。若いツバメを連れて帰ってきました」  田中 秀子

生活のやりくり算段智恵しぼる裏金どころかへそくりもなし        野口 貞子

新緑の北陸路ゆけば桐の花遠く近くにむらさきけぶる           木村 博子

コンビニのフォーさんやさしファックスを送り終わるまで見守りくるる   助川さかえ

街頭に取材受くるもきっとボツ反権力なるわれの意見は          荘司 幹子

■川柳「暁子の会」  米島暁子 選

道草も役に立ってる友ができ    《選者吟》

約束のように土筆も顔を出す      藤ノ木辰三郎

来世でも逢いたいけれど妻の拒否    福家 昭惠

幸せにする約束で五十年        関  玉枝

後光射す朝焼け富士へ手を合わす    髙橋 和男

満たされる味噌汁がある朝ご飯     鈴木 綾子

ああ朝か地球がぐるりひとまわり    津田 健而

多機能の家電手こずるアナログ派    桶谷 康子

週一でもやらないよりはいいじゃない. 山崎 君代

良い趣味は良い人生の良い薬      血矢 行男

薬より良く効くママのおまじない   中山 秋安

ワクチンで騒いだコロナ過去になる  花島 和則  

■つれづれ句会 ― 投句 ―

光りにも重さありし若葉かな
私にも二十歳夏あったけか         甲

 

老い臥して観ぬまに終る桜かな
ふと思う人在あり道辺のすみれ草      三 島

 

道すがらついと眺むる草の花
語らふも飽きてしまいし新茶くむ      波

 

遮那王の抜けし鞍馬に立夏たつ
空蝉やなほ上る気の脚構へ         鳴 砂

 

葉桜の輝く並木これも良し
道訊かれ標しるべに角のはなみずき        佐 藤

 

いやし映えあじさいあふれ手水鉢
立夏来て微風かぜと光に青もみじ         輝

 

補綴歯を庇ひつつ食む柏餅
屋上の大看板や五月晴れ          旦 暮

 

兄からの茶摘みの便りメヒコまで      雅 夫

メヒコでは熱中症と銃弾で死者が増え   (メキシコ)

*ランチョがあるベラクルス州の方では気温50度を超え、

また犯罪組織の抗争などで国内で毎日100人ぐらいが殺されており、

まるで戦争のようです。

 

七七過ぎ振り返る日々はや夏日       悠 心

 

年月やともの気遣い思う日々       かもめ

 

蒲公英の穂絮わたとび立つ帝釈天          火 山

 

柴又の庇ひさしで出迎え燕二羽             美 公

 

寅さんにさくらの情けちりとなり      一 憲

 

たんぽぽに行き先聞きてそっと吹き      敬 直

 

花冷えに吟行の句の重たきや          荘 子

 

東風さそう「野菊の墓」へ渡し舟      紀 行

 

外国語隣に聞きて初夏句会           ちか子

 

葉桜の土手のランチや風やさし        光 子

 

この心緑に染めよ木の芽吹く           義 明

 

参道の老舗の草餅頬落ちる             恵美子

 

いつの日か小鳥が運びし鉢の種赤き蕾のハゼランが咲く
ベランダの窓一面に緑なす今けやき木群青嵐に在り       一 蝉

 

競い合い盛に盛り合うボケ自慢ファミレスランチの尽きぬ談笑   風知草

 

花は葉に変わりゆく世の幸祈る
草むらにタンポポひとつ輝やきて       卯 月

 

投薬なしあおぐ空青く院を出る
バラが呼ぶ日照り続きで喉乾く        しげみ

 

知性問う政界一の購読者(バカヤロ)
おしゃぶりは議員になっても離せない(政経費) 沖 阿

■莢さやの会 ― 投稿 ―
こちょ こちょ     東 恵子

おっ 紺碧の空

ONE ON ONEの手さげに

キズ絆と望遠鏡を 忍ばせて 散歩に出る

ゆりのき通りのゆりの木は すでに

何やら謎めいて 葉をこんもり繁らせて

学名 リリオデンドロン ツリピフェラ

ゆりの木は チューリップに似た花をつけるよ

春の新緑 初夏の花 ただ今 初夏 初夏だ

花色は黄緑色 花弁の基部にオレンジ色の

斑紋がある ああ 葉が出てから咲く花だもの

わかりっこない   せめてそよ風が

味方になって葉を くすぐってくれたら……

こちょ こちょ 

ゆりのき通りは 目抜通り

ゆっくり見上げる ゆとりなども無く

 

五 月      ユ ニ

先を急ぐ旅人のように季節は巡り

五月の溢れる光の中から黒揚羽が現れる

別れ際が惜しまれる懐かしい人との出会いに似て

暫くまとわりついてどこかへ消えた

蜜蜂の梅花への熱狂的な執着は日暮れまで。

今年はその影もないベランダに数える程の梅の実が風に揺れる

3月も終わるころ 不慮の事故で飼猫を失った

山間やまあいを流れるせせらぎのように人を癒し 

苦しみを背負うように命を閉じた

  〝性格が強くなければこんなに長生きはしませんよ〟

ドクターの眼差しが心に残る

脱力した耳にインターホンが響く

届いた美しい花籠は思いもよらない方からであった

 

有と無       永田 遠

この世界は生物と無生物で成り立っていて

第三の存在はない。

(幽霊はいるのだろうか……)

人間は生物のうちの一つだ。

だから、人間はすベて生きている。

(死体は人間ではないのだろうか……)

人間の存在に関する問題は、それがすべて。

(幸せだろうと不幸せだろうと……)

悩みは消え失せた、

生物と無生物の間に落っこちたから。

どこに行ったのか。

その深淵はすぐ目の前の壁のようで

目を凝らしても何も見えない。

 

えいさあ    湊川 邦子

沖縄の盆踊り

精霊送りをすませて

歌いながら踊る

坂川の花桃まつりの日

初めて見たエイサー

透きとおるような青空に

紫色の衣装が

とても似合っていた

さわやかな踊りを

大人にまじって元気に踊る子供たち

太鼓の音が坂川に鳴りわたった

すっかり 心が洗われた気がして

沖縄の盆踊りエイサー