■俳諧「奴凧」

元日やめで鯛よろ昆布多幸喰って    佐藤 春生

冬紅葉散るはてまでも恋ごころ     吉沢緋砂子

恵方より天を貫く飛行雲        鈴木 翠葉

焼き餅は雑煮の椀のあるじなり     勝  太郎

お元日吾子のひらがな箸袋       小林 今浬

冴ゆる夜や寝酒二合もあればよし    松山 我風

■短歌「合歓の会」    久々湊盈子 選

ノアのごと大き箱舟に救いたし能登に無情の氷雨つづけば        《選者詠》

開店の祝いに贈られし掛時計廃業せし今も時報を告ぐる         山崎 蓉子

恋慕の情は千年前と変わらぬと「古典講読」聴きて思いぬ        近広秀一郎

掃除終わりしルンバの手入れ掃除機でなんだかなあと思いつつする    鈴木 暎子

踊り場にドラムセットがひっそりとあの熱気から幾年過ぎた       大江  匡

庭の柿一つ残らず食ひ終へてあつぱれヒヨドリしづかな正月        津田ひろ子

■川柳「暁子の会」     米島暁子 選

あるがまま生きて人生よしとする   《選者吟》

嬉しいこと多々あるがまた悲しみも   谷畑  顕

老いてなお甘い生活夢見てる      中山 秋安

運だけで掴む幸せ続かない       寺澤 秀典

餡を煮て夫婦汁粉のお茶タイム     木間 弘子

甘い蜜虫鳥人も寄ってくる       血矢 行男

まあいいか断り切れず保証人     花島 和則

原発の脇の甘さへ背が凍る       橋 和男

目ざめたら心に笑顔運を呼ぶ      花嶋 純代

金運は無いけどいつも超楽し      板橋 芳子

頑張れるいつもの気合今日も入れ    鈴木 綾子

血糖値高い時には甘さ拒否       藤田 栄子

■つれづれ句会 — 投句 —

夢といふ字を大空に初詣
胸のすくふ人に会ひけり初御空        甲

冬日和譲られし席薬の香
言えぬ事あれど我慢よ枯葉踏む        波

初富士を我がベランダで拝みけり
何一つ変らぬ朝のお元日          三 島

仙人と化して穏やか去年今年
じじばばもSNSで年賀状          旭 

枯れはすや枯れついつもの朝陽浴び
枯れはすのゆらりと生きる手賀の沼      輝

壊滅の家並みを写す裏面は旅に誘う賑やかな広告   風知草

手土産は鯛焼きに決めこころ落つ     火 山

寝返りの度に掻きあぐ湯婆かな       ちか子

八十路越え黙して妻と忘年会         敬 直

本堂に手あぶりひとつ鄙の寺       光 子

のんびりと柚湯に浸り齢吐く       荘 子

街中に古き物消え冬薔薇          一 憲

クリスマス孫にケーキを強請る猫    紀 行

ひよどりの声におわれて竹を切る       義 明

朝日浴び心ゆたかに枯れ葉踏む        恵美子

初夢は故郷の海幼なじみ生家の庭があれば大吉
年賀状届かぬ友を案ずれば骨折中とメール着信      一 蝉

飛行機雲一直線に空を割く
初春のピアノサックス煌めきて         卯 月

辰年や暴れ狂うな雪の朝            悠 心

喜びの友の来訪驚くや             かもめ

車座に上席はなくお屠蘇かな
橋越えて鋭くと麦の芽するどかり        鳴 砂

源泉はかけ流しする派閥では
AIでは記録違いは見抜けない         沖 阿

■莢の会 — 投稿 —
水仙と小惑星と       東 恵子

午前3時 切り花は時として 変身する?

昨年最後の満月に頂いた ニホンズイセン

白い6枚の花びら 真ん中に黄色い

アンテナをつけて 変わらない

ケレス パラス ジュノー ヴェスタ

火星と木星のあいだには 小惑星とよばれる

小さな天体がたくさん まわっているらしい

するするガラス戸を開け放つ

ホルストの組曲〈惑星〉を聞かせたい

火星……戦争をもたらすもの

木星……快楽をもたらすもの

ソファーで 毛布にくるまって

眠っている間に 眠っている間に

ニホンズイセンの花たちは あっと言うまに

旅立って行くよ きっと

小さな天体となって まわり続けると思うけど

 

これが私の原風景なのかも知れない   湊川 邦子

登下校の近道に 山の中を一人

つき進む毎日だった

防空壕がまだ残っていた

ささやかな墓地もあった

15歳ごろの私

今でも目を閉じると あの頃の

風の音 雨の音 木漏れ日 恐かった気持

そして そして

山を抜けると 川が流れていた

そのせせらぎ ほっとした

遠い 遠い 想い出

誇らしい 誇らしいのは なぜ

15歳ごろの私

これが私の原風景なのかも知れない