この春から、なんとなんと、月に一度、仕事で東京に通うことになった。
新幹線に乗って1時間20分ほどだから、たいした労力ではない。
けれど、新幹線代が……
ま、それは往復で8000円くらいではあるのだけれど、
なぜか東京へ行くと、とんでもなくお金を使う事態に陥るのだ。
なにかとすぐに喫茶店に入ったり、美味しそうなケーキをお土産に買ったり、
魅力的なものがいろいろあるもので、つい、「わ~っ、素敵」と、
目をぱちくりさせたとたんに購入していたりする。
おまけに「東京で仕事」となると、
美容院にもいくことになるし、すっぴんというわけにもいかない。
化粧品も必要だし、スーツもちゃんとしたのを持っていないとなあ、
ということになる。
思えば、那須に移住して5年、美容院には一年に一度ほども行かない。
お化粧もどうやるんだったっけ? と、もうなにも覚えてもいない事態だ。
那須では、おしゃれをしてもしなくても……の気ままな日常を過ごしていたから、
ずぼらな私はここ5年、洋服のたぐいは買ったことがない。
おまけに、グルメでもない。
食事を頼み忘れたりしたら、レトルトごはんをチンして、常に納豆ご飯か、卵かけご飯。
それに野菜ジュースをいっき飲みして「これで、栄養完璧!」みたいな日々を送っている。
要するに、全然、お金を使わない。
というわけで、しばし沈思黙考。
せっかく東京まで出掛けて仕事をするのだから、それを単なる消費行動にしてはいけない。
より有意義なことに費やすべきよね、もう先も短いのだから……。
「そもそも、あなた、やり残していることはないの?」
と、つい、自問自答モードに陥ってしまった。
やり残しているといえば、仕事のたびに宿泊している元実家の片づけ。
目下は、二階に息子夫婦と孫たちが住んでいるけれど、今年中に引っ越す予定とか。
となれば、もう、見ないふりで過ごすことはできない。
毎月、来るたびに、必ずどこかの棚や、家具や、クローゼットの中を整理し、
不要なものを処分していかねばならない、と。
さらに、仕事も次々と思いついた。
時間ができたら、追加取材をしてルポにしようと思いつつ放り出していたものもある。
そういうのだって、今やらなくて、いつやるの?
考えれば、ついつい、やり残していることばかりが思い浮かんできてしまう。そんなわけで、
人生とは、やり残したことだらけで終わっていくに違いないのだ、としみじみと思い至ってしまった。
それでもいいから私としては、
一つでも、二つでも、やろうと思っていたことをやろうとし続けて終わりたいかなあ、と思う。