■俳諧「奴凧」

神が住む日光白根や天高し          佐藤 春生

栗まんじゅう酒もまた良し二刀流       吉沢緋砂子

小鳥にも家路のありや秋の暮         鈴木 翠葉

会釈するマスクの人に覚えあり        勝  太郎

運動会万華鏡のごと子が爆はぜて       小林 今浬

折々の風のそよ吹く秋桜           松山 我風

■夏日俳句会                 望月百代 選

みしみしと越後より来る新走り       《選者吟》

九月果つ金に輝く雲の縁           井川 美江

世の風をゆるりと躱かわす男郎花       井土絵理子

口中に麻酔の残る秋真昼           岩下三香子

秋麗やあらら遠くへ来すぎたか        岩本 純子

萩たわわいつしか人の住まぬ家        太田 住子

大人の耳大人の目なり秋の声        菊井 節子

中毒になりさう泪夫藍さふらんのひとつまみ 河野 悦子

実柘榴や敷居の低き寺の門         佐藤 弘子

ポッポやの誇りの秋や文明開化       佐藤 隆平

葛あらし工事夫高く言葉投げ        鈴木 るる

風と来て風置きざりて九月尽        築  幸枝

秋うららおもちゃ箱より万歩計       恒任 愛子

秋うらら銀座にて買ふ香一つ        都丸れい子

音も無く影も落とさぬ花茗荷        間部美智子

草の実のこぼれやすくて忌日かな      丸澤 孝子

末枯の岸辺男とドーベルマン        渡辺 紀子

■短歌「合歓の会」            久々湊盈子 選

黒海艦隊旗艦モスクワ撃沈され露軍に秋の風吹きそむる      《選者詠》

昼下がり濃きさるすべり風にゆれ駅前通りに彩り添える        天野 克子

一年も会わねばはらぺこ青虫の孫は揚羽になりいてさびし     助川さかえ

青紫蘇を食害する虫憎まずに今宵の刺身に花穂を添える      木村 博子

たそがれて蜩の声やみたればどこかかそかに虫の音聞こゆ      野口 貞子

海辺には人影まばら波高く石段いしきだのぼりていざ帰りなむ    田中 秀子

■川柳「暁子の会」             米島暁子 選

情熱を絞り出してる老いの恋        《選者吟》

曲者と聞いてかまえる初対面        鈴木 綾子

ままならぬ恋は魔物か曲者よ        血矢 行男

曲者の光る個性が見え隠れ         木間 弘子

桃みたい食べちゃいたいな孫のほほ     髙橋 和男

ゲテモノと珍味の違い紙一重        寺澤 秀典

お土産の寄せ木細工が崩せない       花島 和則

曲者は丁寧に嘘つきまくる         藤田 栄子

かしこまりたまに夫婦でレストラン     正木ふう子

満足のゆくまで読書さあ夕餉        桶谷 康子

満足は花とフルーツあれば良い       中津 和子

ふる里へ帰りたいけど我慢する       福家 昭惠

■つれづれ句会 ― 投句 ―

屋根朽ちて人無き庭の柿たわわ

衿立ててお通夜帰りの月天心                  三 島

 

みんな山大きく見えて秋彼岸

あやまちはくりかへします秋の暮                 甲

 

ひざしさし秋明菊しゅうめいぎく咲き乱れ     かもめ   

 

童の声に元気もらいし秋の夕

見上げればキンモクセイに癒されし            悠 心

 

母に似る姉の目元やマスク顔

部屋真中一枝まなかひとえ活けて秋おしむ       輝

 

ミニ額のゴッホ取り替えて秋になる

コロナ禍の「可愛い」は心のサプリ         す ず

 

しがらきの赤むらさきに惜しむ秋

柿の実に甘と渋あり人の世も            鳴 砂

 

似てきた手偲ぶはさみとななかまど

絵手紙の落柿舎の柿色づきて             かすみ

 

半世紀を異国にありし弟は秋風になり我を訪う

再会の抱擁のあの温もりを思い出させる柔らかな日差し  風知草

 

遠い日の君と私の初恋は潮騒たちにさらわれました

片思い辛さ語りし友も今孫六人のデブ婆ーちゃん    一 蝉

 

予定家事こなして秋の夜清々し

秋風や私はわたしと思う朝                    卯 月

 

インフレに企業栄えて国滅ぶ(溜めこんだ儲け)

カッパ鮨頭の皿換えへのカッパ(営業機密)          沖 阿

 

 

午前二時大音響の雷に醒むる                火 山

十六夜のやさしき光夜散歩                 敬 直

爽気満ち森に包まる晶子の碑                   一 憲

君逝きて十六夜月に雲流る                    光 子

六地蔵境内埋める彼岸花               善 彦

子供らの声に響むや滝飛沫(袋田にて)          紀 行

天高し真一文字に走る雲              かおる

秋彼岸墓前に捧ぐ美智也節             ちか子

病いいえ訪ねし森のすずし風              義 明

爽やかな風に寄り添ふ松戸宿              美 公

月明り心奪わう枯山水                 恵美子

■詩人の会 ― 投稿 ―

朝よ さいはての 朝よ             東 恵子

 

新松戸は今 秋のさなかにある

わたくしは今 喪失感のさなかにある

 

初夏に到来した 巨大な 紗しゃの黒幕は

そのままに 西の山並みは遠のき 富士山は

消え スカイツリーは 消え

来ないのよ 来られないのよ ベランダに

トンボの繊細な家族づれ

 

口遊くちずさむ

街路樹を朝日が金色に染めて……

待ちこがれる

七丁目を出発したバスは「けやき通り橋」を

渡って 駅へ駅へと急ぐ その……朝の姿よ

 

新松戸は今 秋のさなかにある

わたくしは今 喪失感のさなかにある