久し振りに東京に来た。
ゴールデンウィークもとうにすぎ、いつものごとく新幹線はがらがらではあったが、
大宮に着き、普通電車に乗り換えたとたん、私はくらくらしてしまった。
もう、人、人、人……で、ぶつかりそうな人の群れ、
突き飛ばされそうで怖い、怖い。
ここ二年ほどは、コロナ禍のせいで首都圏には近づかない私だった。
でもわずか二年だ。が、しかし、されど二年だった。
なんだか、異次元の世界にワープしちゃった感じ。
そもそも、この二年で、この私、なんだか年をとっちゃったらしいのだ。
環境の変化への対応能力が、ガクンと落ちたかも。
そもそもの原因は、数か月前に転んで膝を痛めてしまったこと。
目下、治療中でのろのろしか歩けない。
こういうハンディを負うと、都会の生活はなかなかに厳しいことが実感される。
駅の階段なんて、見ただけで泣きそうになってしまう。
それにしても、なんで?
と思うほど、都会人は誰もかれもが先を争うように早く歩く。
那須では、早く歩く人なんかいないのに……。
練馬にある家まで行く途中に、まずはデパートに寄った。
そこで、眼鏡の壊れたフレームを直してもらい、
花柄のおしゃれで素敵な杖を購入した。そこで、歩き方を教わった。
「痛い足の反対の手に杖を持ち、痛い足と同時に杖も出す」
これが、結構難しい。
ついでに膝のサポーターと五本指の靴下も購入し、家の最寄り駅にようよう到着し、
見知った懐かしい駅前の広場に立ってあたりを見回した。
そのとたん、だった。
あらら、息子がいる……と思ったら人違い。
よく見たら、男たちは皆、コンビニマスクをつけて、ユニクロのシャツとかパーカーとかを着て、
リュックを背負って、歩いたり、自転車に乗ったりしているではないか。
駅前のスタバでコーヒーを飲んでひと息つき、目を凝らし、さらに見たら、
若者からそれなりの中年まで、あらら、みんなおんなじエイジレスな格好じゃないの、ということに気づいた。
在宅ワーカーばやりで、みな、スーツを捨てたらしい。
そうよねえ、ウクライナの大統領も若き閣僚たちも、みんなそんな感じだものねえ、
と急速に時代の変化を実感してしまった。
そんなわけで、そろそろ二週間。
もう帰らなきゃ、もう帰りたい、と思うのだけれど、
二世帯住宅の二階には息子家族が住んでいて、なにかと子育てに忙しい彼から
「もうちょっと、もうちょっと」と言われて、かなりずるずるになっている。
おまけに、ここ数年の間、ずっと放置してきた一階部分の片づけに、
膝が痛いのにうっかり手を染めたら収拾がつかなくなってしまった。
面倒なことは、見て見ぬふりで通り過ぎるべきだったのだ、と思うばかりだ。