■俳諧「奴凧」

津軽路はどこまで行っても花りんご   佐藤 春生

春の夜や肴はかるく一人酒       吉沢緋砂子

山間に幟はためく一軒家        鈴木 翠葉

すだれ替え風のおとづれ待つばかり   勝  太郎

吊るさるる玉葱ひとつ食卓へ      小林 今浬

鉛筆を舐めて書く癖麦あらし      松山 我風

■夏日俳句会        望月百代 選

万緑や一職人となりし君        《選者吟》

白山吹散るや厨の欠け茶碗       井川 美江

大でまり足の痛みを忘れをり      井土絵里子

川音に混じり槌音更衣         岩下三香子

五月来る緑のペンで書く予定      岩本 純子

青葉潮船のけだるきエンジン音     太田 住子

薫風や踏切の音遠くまで        菊井 節子

ジーンズのぱりっと乾く端午かな    河野 悦子

聖五月母なる海に真向ふて       佐藤 弘子

伸びる日を競ふて伸びる柳絮かな    佐藤 隆平

てきぱきと五月の空のほぐれ来る    鈴木 るる

新樹光木漏れ日に足取られをり     築  幸枝

口中にしばし含みし新茶かな      恒任 愛子

折折に開く文箱よ桐の花        都丸れい子

五月晴少し遠出の車椅子        西岡千代子

五月来る堰切る如き畑仕事       間部美智子

校庭の五月白線の新しき        丸澤 孝子

病む地球深紅のガーベラ咲かせゐて   渡辺 紀子

※お問合せ ☎︎047-345-4574(間部)

■短歌「合歓の会」       久々湊盈子 選

聴きなれた楽曲なれど目を閉じて今宵は聴かん「キエフの大門」     《選者詠》

向日葵の群れて咲けるも悲しかり古き映画シネマのラストがだぶる      大江  匡

「祖国」という甘き響きの幻想よ身捨つるほどのものにはあらず      石川  功

まず御飯、チンジャオロースに春巻きと筍茹でつつにこにことする     角本 泰子

走り来る児を待つ電車早春の坂東の駅に発車ベル鳴る           山本 一成

赤と白の椿がぽとりと地に落ちて碧梧桐の句が頭かすめる         津田ひろ子

■川柳「暁子の会」         米島暁子 選

いい事があって窓辺に蝶が舞う     《選者吟》

ささやかな楽しみ見つけ生きる母    藤田みゆき

頑張れと心の中で言い聞かす      神保 伸子

苦楽経て金婚式にたどりつく      箱崎とし子

また明日まっかな夕陽沈みゆく     藤田 栄子

愛妻の歩幅に合わせ花巡り       中山 秋安

やり遂げてゆっくり休む今が良い    血矢 行男

春うらら笑顔のあなたお雛様      板橋 芳子

のぞきたい藤井五冠の脳の中      花島 和則

足腰も脳も鍛えて老い多忙       正木ふう子

せっかちがなぜか惚れますのんびり屋  髙橋 和男

一万歩今日も歩けた撫でる膝      寺澤 秀則

■つれづれ句会 ― 投句 ―

四十雀の声も届かぬシェルター牢誰か裁かんノアの日のように    ユ ニ

 

市の花木けやきの街路大つゝじ

五月晴れ旋律奏でたおやかき      輝

 

立ち止まることも大切カタツムリ

羽蟻や羽を引きずって歩きけり     甲

 

蕗の薹道祖は石に還り居て

木片に還る絵馬あり若葉風       三 島

 

歩をとめて八百屋の店先初西瓜

手の平に乗せて水切る冷奴        波

 

デイケアに迎へ忘らるる春の人      火 山

蜥蜴とかげの子戦無きやと穴出いづる   美 公

筍の皮むく妻の嬉し顔            敬 直

宮滝遺跡にて
老ひひとり廃墟に立ちつ春を待つ          光 子

壬申の乱しのばるる春の丘           ちか子

真実を知らされぬ民冬の国         善 彦

畦青む田は黒々と目覚めけり        かおる

人はみな泡沫うたかたの身や花吹雪     一 憲

縁鼻や爪研ぎ背伸びの仔猫かな       紀 行

やわらかな風に吹かれてタケノコ掘る    義 明

竹の子の皮脱ぎ軽き風を着る          恵美子

 

似ているは我が指の節母の日に

かぶと見る遠くの息子親となり         かすみ

 

ロウバイの香りやさしく気分はれ      いぶりがっこ

 

藤の花香りほのかに風に舞う         かもめ

 

 

黒煙と瓦礫の町車内にはひしと犬抱く少年がひとり

ウクライナロシヤ兵士それぞれの帰りを祈る父母ありぬ    一 蝉

 

空晴れ渡り若葉のみどり煌めきキジ・カエル 啼き競う     お太助

 

とむらひのつり銭戻らず梅雨間近か

心情を明かす句となり五月雲        卯 月

 

孫子らの祝いの言の葉道連れに八十路の旅へ始めの一歩

幾たびか共に愛で来し花の庭主は遠き終の住み処に       風知草

 

五月晴れ所詮勝負は馬場次第

右にウメ左アンズのカフェテラス      鳴 砂

 

胃瘻はね味わい失くす措置と知り

コロナでも検査受けずば分からない     沖 阿