■俳諧「奴凧」
野の仏微妙な笑顔安房の春 佐藤 春生
黄水仙ぽっと一輪庭のすみ 吉沢緋砂子
朝掘りの竹の子づくし夕餉かな 鈴木 翠葉
花桃の終りて川の道しずか 勝 太郎
逃げ水に追いつくすべなし恋心 小林 今浬
菜の花や遠嶺は雲を離さざる 松山 我風
■夏日俳句会 望月百代 選
春愁の酒場七・八人に足る 《選者吟》
満開の花の中なるポンペイ展 井川 美江
函嶺にとりわけ春日濃かりけり 井土絵理子
駅まるごと桜吹雪の中にあり 岩下三香子
花筏海原までのひとり旅 岩本 純子
ゲルニカに今を重ねし花の冷 太田 住子
しりしりと人参刻む春の雨 菊井 節子
花の下思ひ出ひとつ引き出せり 北村 綾
さくらさくらうつらうつらの昼下り 河野 悦子
小半時わが街旅すライラック 佐藤 弘子
初桜見とどけ鼻唄さあ何処へ 佐藤 隆平
深追ひは無粋菜の花化して蝶 鈴木 るる
春愁や句集に切り貼りされており 築 幸枝
八方にみなぎる力緑立つ 恒任 愛子
予後の友誘ふて蓬摘みにけり 都丸れい子
囀りも仲間に入れて縄電車 西岡千代子
杏咲くお元気ですか末子さま 間部美智子
花曇り水笛を売る男かな 丸澤 孝子
水楢の芽吹く戦火を案じつつ 渡邊 紀子
■短歌「合歓の会」 久々湊盈子 選
川の面に触るるがごとく枝たれて桜はおのれの艶えんを見ており 《選者詠》
催花雨さいかうを受けて葉ぼたん覚醒す遠きかの地の戦火もしらず 川上 頼枝
沈丁花寄りあうごとく咲きだせばしみじみ独りと思うその香よ 木村 博子
紅白の梅とミモザに陽はそそぎ春の演出これ以上なし 羽毛田さえ子
うつつかと未いまだに思う退院のその日の会話が最後だなんて 田代 鈴江
紅椿ポトリと土の上に落ち見上げる空に白雲浮かぶ 野口 貞子
■川柳「暁子の会」 米島暁子 選
いい風に乗り蝶になり花になる 《選者吟》
眠ってる着物リメイク新ドレス 中津 和子
感謝して何でも利用高齢者 鈴木 綾子
八十路坂もう利用価値無いのかな 谷畑 顕
内緒でね婆に聞かせる片想い 松竹 妙子
日溜りのあなたの右はだれの席 山崎 君代
宇宙船男のロマンかきたてる 福家 昭恵
ロマンスの効き目背筋がピンとなる 桶谷 康子
晴れた空今夜の月は美しい 寺前 絢子
耐えていた姪派遣から正社員 石井 高子
老体をひきずり貴方仕事行く 水上 潤子
健やかに歳を重ねて天寿待つ 吉田 英雄
■つれづれ句会 ― 投句 ―
触るるとは祈ることなり初ざくら
口ずさむ古き演歌や夕ざくら 甲
この街に残る藁家の鯉のぼり
八十半ば過ぎし男の子の端午かな 三 島
川堤やなぎの揺れは風情なり
桜花雨語る人なし歩のしらべ 輝
古希過ぎて亡き父母想う春うらら いぶりがっこ
春風よ花びら散るや人混みに かもめ
八十路ころんで起きて犬ふぐり
すれ違ふ話頷うなずく四月馬鹿 波
声に出し俳句読み書く春の星 火 山
ウクライナ平和願掛け老い桜 美 公
手のひらに土の温もり春を知る 敬 直
凍てる道子の眼に涙母と行く 光 子
戦禍から逃れる民の長き冬 善 彦
鳥あまた帰巣を急ぐ春の夕 紀 行
まほろばの山辺の道木の芽時 一 憲
森未だやに色解けず白き梅 かおる
車椅子停めて仰ぐや花あんず ちか子
すさむ世に忘れず咲きし花うれし 義 明
碧天に助命念願揚げ雲雀 恵美子
いつの世も同胞保護は常套句正義に名を借る侵略の口実
外の声届かぬロシアこの国も大本営発みな信じていた 風知草
銅鑼の音や別れテープに風光る
胸中の深傷をいやす桜かな 鳴 砂
春間近召されし空の青さかな
さようなら悲しみ苦しさ蝶は舞ふ 卯 月
還らむよせめて雪より花の道(ウクライナで犠牲になった方々へ) ユ ニ
並んだ鉄塔 どこからきたの どこいくの朝日を浴びて 光ってる お太助
冬木立間をぬって行く電車眺めるだけの二年が通る
月曜日火水木金土日と日々加速する我風車 一 蝉
支持と指示勘違いしたプーチンは
出兵で露と消えにしわが夢は(昔も今も) 沖 阿