■俳諧「奴凧」

鉱山の番屋の軒に梅一輪           佐藤 春生

しのび入る昭和の家に隙間風         吉沢緋砂子

雪だるま首傾げつつ溶けはじむ        鈴木 翠葉

頬なぶる風にも春立つ気配あり         勝  太郎

流氷に恋ひとつ乗せ見送る日           小林 今浬

酒ささ少し召したる海人あまの鬼やらひ  松山 我風

■夏日俳句会    望月百代 選

手鏡に映りて春の雲をかし    《選者吟》

誕生日の他何もなき二月かな    井川 美江

大寒や白湯よ私にしみわたる    井土絵里子

冬満月浄化されゆく心地かな    岩下三香子

足もとのふあふあ青き踏みゐたり  太田 住子

春立つ日ワクチン三回目となりぬ  菊井 節子

初場所や贔屓力士の男前      河野 悦子

ロボットの運ぶランチよ山笑ふ   佐藤 弘子

鴉二羽挑むや寒の夕焼け空     佐藤 隆平

受け売りの話三寒四温かな     鈴木 るる

春きざすイントロ聞いて分かる曲  築  幸枝

寒雀校庭の樹木飛び交へり     恒任 愛子

雨水かな園に人声鳥の声      都丸れい子

冴返る径に迷ひて雑木林      間部美智子

切れ長の如来の伏し目雪催     丸澤 孝子

春立つやペンキ塗らるる停泊船   渡辺 紀子

■短歌「合歓の会」    久々湊盈子 選

2022年2月22日生きてのち二度と遇わざるアヒルの隊列    《選者詠》

冬枯れの庭にほのぼの香れるは春のさきがけ蠟梅の花        川上 頼枝

お水取りの大松明の紅蓮ぐれんもてこたびの災厄祓はらい賜われ   木村 博子

遠き地に越しゆく友の幸いを願いて刺しゆくバラの刺繍を       羽毛田さえ子

その内に会いましょうねと言う友とその内その内いつもその内     田代 鈴江

日だまりの温さ持ち去る風が吹き午睡のねこはくしゃみして覚む    野口 貞子

■川柳「暁子の会」     米島暁子 選

年金と趣味で心洗われる     《選者吟》

仲良しと心に残る小焼け歌     寺前 絢子

苦楽経て金婚式にたどりつく    箱崎とし子

ささやかな楽しみ見つけ生きる母  藤田みゆき

頑張れと心の中で言い聞かす    神保 伸子

耐えていた姪派遣から正社員    石井 高子

老体をひきずり貴方仕事行く    水上 潤子

健やかに歳を重ねて天寿待つ    吉田 英雄

黙食が板についてる我が夫     鈴木 綾子

手作りのワインで孫とお正月    板橋 芳子

薄味で健康管理妻の愛       中山 秋安

旅に出る地元料理が舌を打つ    寺澤 秀典

■つれづれ句会 ― 投句 ―

かつて恋いまは春待つベンチなり

初雪やからだの芯を通るなり      甲

 

春立つと思いつ結露の窓をふく

妻吾れにホワイトデーのウイスキー   三 島

 

生きものヽ水面にひらくすヾしろの葉

梅咲いて両振袖を広げ立ち       ユ ニ

 

冬中に老いのまぶしき草木風呂

静寂に水音も凍てる四度の滝       輝

 

細枝のひしゃげてこぼす雪雫

雪溶けて何ごとも無き日の光      波

初御空日はすでに宙天にあり      火 山

初空に茜を帯びてもゆる富士      一 憲

初空にそっと見上げる孫の丈        美 公

亡き母の手入れせし庭の実千両        光 子

初空に鈴の音響く神社かな        紀 行

大仏の初空高く飛行雲        かおる

初夢の続き昼寝のひじ枕         敬 直

コロナくん羽交い締めにて動き得ず  義 明

初日差す障子に遊ぶ鳥の声      善 彦

初春や俳句暦に闘志燃え       ちか子

初御空煌めく竹林軽やかに        恵美子

 

お雛さま箱抜け出して春告げる  いぶりがっこ

 

コロナ禍菜の花咲くや寒風に     かもめ

 

益荒男の手挟む太刀や水仙花

竹人形右手に一輪ユキツバキ     鳴 砂

 

大寒や入院ベッドの君想ふ

願わくば共に北斗を眺めたし     卯 月

椿咲く余所の庭にて父思う

遅れあり冴返る人夜ホーム      かすみ

 

口あけて空見上げる幼子の舌の先にも春の淡雪

幼子は春は空から降ると言う窓みな開けん明日より三月    一 蝉

 

春風と散歩した夢を見た

春風を振り返ると幸がある        シゲル

 

年なんだ何をわすれたかも忘れてる

法案を何処に送るの先送り(見送りだ)  沖 阿