町の文化施設、夢プラザに出掛けた。

なにをしに? って、例のワクチンを打ちにです。

一応、わがコミュニティは高齢者施設にカテゴライズされているので、

接種が始まった途端に自主運行をしているミニバスの送迎で会場に行くこととなった。

申し込み順に1回目も2回目も4日間で、午前午後の8便の送迎で、

入居者も関係スタッフもほぼ全員のワクチン接種がすみやかに進められて、無事終了となった。

その終了日の夕方だった。

かねてより「ワクチンを打つよ」と知らせてあった東京在住の息子が、確認の電話を掛けてきた。

「それでどう? 副反応とか出てない? 大丈夫?」

わざわざ心配して電話をくれるなんてねえ、とそれなりに感激して

「大丈夫よ、心配しないで」と答えたら、

「これでもうコロナにかかっても、おかあさんは、重症化はしない。よかった、よかった」と。

こちらとしては「えっ、重症化はしない? まだかかる場合もあるわけ?」と、一瞬ビックリしたが、

思えば2度打てば防御率90%以上、確かに100%ではないのだった。

息子曰く「でさ、じきに夏休みだからさ、子どもたちの面倒が……」

なんだ、なんだ、結局、さっそくの子守り予約であったのかという感じであった。

それでも、東京にも行ける、孫娘たちにも会える、旅行にも行ける、やったあ、

万歳! といううきうき気分で、部屋で自炊中のひとり夕食の折に、

ついつい冷蔵庫から缶ビールなどを出して、グイ、グイッ、と飲んだ。

そんなふうにひとりで祝賀気分を盛り上げていたら、とんでもないことになった。

飲んだのは、たった350mlのビール缶1本だけだったというのに、

いきなり酔いがまわった。

「ナンダ、ナンダ、コレハ、マズイジャナイカ」

と、水を飲もうと立ち上がったら、なぜかクラクラッとめまいがして、

不覚にもその場に倒れ込んでしまったのだった。

なんとか傍のベッドへとはい上がり、しばし倒れ伏して静かにしているうちに、

いつのまにか眠り込んでしまったらしい、のだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その翌朝だった。

いつもなら早朝5時には目覚めるはずの私は、朝9時近くにようやく目覚めた。

「夕べはいったいなんだったの?」

と、思いながら洗面所で歯を磨いていたら、同じ棟の三軒先の親しい入居仲間が、

いきなり部屋の引き戸を開けて大声を上げた。

「ちょっと、ヒサダさん、いるの! 大丈夫かあ?」 

「いるよ、どうしたの?」と顔をだしたら「なんだあ、元気じゃん」と。

聞けば、携帯に何度電話をしても出ない、ラインを送ってもまるで返事がない、

どうかしちゃったんじゃないの、とプロジェクトメンバーの一人が、

同じ棟の私の仲良しの彼女に、「おかしい、部屋をすぐ見に行って」と頼んできたのだとか。

どうも、私は、それほどにも熟睡していたらしい。

「ええっ、そうなの? 全然、目が覚めなかった、気が付かなかったよ」と答えたら、

「え~っ、ワクチン打って、意識喪失してたんじゃないの! それってとんでもないじゃん、

危なかったんじゃないの、そのまま目が覚めないってことだってあったんじゃないの~」だって。

確かに、周りには、高熱が出たとか、寒気がしたとか、

中には二日間も眠り込んでいたとかいう人までもいて、

なにかと「私の場合のワクチン副反応」話が、

食堂やら、井戸端会議ならぬ中庭会議や、散歩途中の坂道などで盛り上がったのだった。

ま、私の場合に限っては、ただ酔っ払っただけだったとは思うけど。