◆俳諧「奴凧」

八十年かけて忍野に泉湧く       佐藤 春生

こしゃくにも斧ふりあげて子蟷螂    吉沢緋砂子

雨だれの拍子みだれる白雨かな     鈴木 翠葉

若竹や衣脱ぎ捨て天目指す       勝  太郎

熱帯夜激しい雨音心地よし       小林 今浬

ともすれば頷くだけの極暑かな     松山 我風

新宿のコロナ越えゆく夏の雲      小檜山游生

 

◆夏日俳句会   望月百代 選

夏草や淋しくないか夢あるか      《選者吟》

いにしへの遠見番所の蜻蛉かな     井土絵理子

青かなぶん舞ひ込み夜を搔き回す    岩下三香子

炎暑かな七十五回忌祈りの日      太田 住子

呉服屋の寛斎浴衣目を引けり      小川トシ江

太陽の出ぬ日続きて七月尽       菊井 節子

ダリヤポンポン咲くや足取り軽くなる     河野 悦子

発声のまだ覚束な朝の蝉        佐藤 弘子

ぞはぞはと近づく疫病黒栄えて     鈴木 るる

桐一葉弔ふ言葉型通り         築  幸枝

赤のまま見知らぬ土地に踏み込みぬ   恒任 愛子

夕立や草の匂ひの手を洗ふ       都丸れい子

空青し敗戦日あり今日のあり      西岡千代子

天牛を捕へてちから試しごろ      松沢 照晃

炎天や恋しいものに海の青       間部美智子

ラムネ玉ポンと昔の空の色       丸澤 孝子

 

◆短歌「合歓の会」 久々湊盈子 選

面相をあげつらう気はなけれども品位というは口元に出る                                                 《選者詠》

これみんな日本語だよと言う息子カタカナ用語あまたのスマホ                                              田代 鈴江

ほうたるを蚊帳に放ちし幼き日母のうちわの動きかそけく                         

                     羽毛田さえ子

喫煙のできるわが店若者は散髪待つ間にはや三本目                                                     川上 頼枝

ご披露を終えて牡丹しゃくやくが来年またねと散りてゆきたり                                                吉野 清子

足元の段差に躓(つまず)きおっとっと老いはありあり思わず苦笑                                                野口 貞子

 

 

 

 

 

 

◆川柳「暁子の会」  米島暁子 選

一冊の本が生きろと吠えている   《選者吟》

じゃじゃ馬もお嬢さんぶる見合い席   阿部 章一

百めざし月のいい土地買っておく    原  尚志

上げ底と袖の下には裏がある      飯高 晃栄

まだまだと四半世紀を生き延びる    香宗我部智江子

靴底に細工背だけが少し伸び      久留井由利子

すずめ百私百迄踊ります        黒沢 道子

医学部へ成績無視の合格者       山本 初枝

ボランティア続けて白寿そこに見え   板橋 芳子

上げ底の下に諭吉の束がある      鈴木 多美

◆つれづれ句会 ― 投句 ―

秋空に親しむ富士は暮れにけり

自然薯地酒を友と酌む夜かな        三 島

 

湯上りにアイスを飲んで癒される

百日紅(さるすべり)ピンクに染まり散歩道  かもめ

 

遠雷や水の匂ひの風わたる

敗戦忌長寿の国となりにけり     申

 

月青し夜のしじまに犬の声

秋祭りはやし屋台に友偲ぶ       とにお

 

セミしぐれ儚き夢の酔いやぶる     お太助

 

朝顔に命惜しみし小花かな

わが憂ひもって擂る々とろろ汁     波

 

百合開く姉の仲間に妹居る      火 山

 

山百合やちょぼ口開き香ぐやかし   美 公

 

夏祭り寝息背負いて帰りたり     敬 直

 

奈良の鹿眼(まなこ)やさしや梅雨晴間   光 子 

 

祭なき七夕の夜のひとり酒       かおる

 

七夕や子のいる家の窓明り       善 彦

 

白秋の「この道」 襲ふ梅雨出水    ちか子

 

七夕竹豪雨に負けぬ児等の文字     恵美子

 

店仕舞い土用の鰻桶にあり       一 憲

 

洗濯籠今日も満杯(まんぱい)梅雨の空  太 郎

 

夏の雲田舎の母にも続く空

疲れた日夏大根で食すそば       かすみ

 

蝉しぐれ余韻残して暮れにけり

揚羽蝶網を逃れて青空へ        卯 月

 

敗戦も捕虜となる身も知らぬ日の松花江河畔短パンの父

ハルピン市砲隊街の生家には名もなきままに眠る妹   一 蝉

姫ボタル・スーパームーンを待つ構へ

腐っても秋刀魚と言ふ日の近づけり      鳴 砂

 

葛のつる歩道の坂を登っている    

あぶら蝉網戸に掴まり鳴きもせず       眞 美

 

地を染めるつる垣におき凌霄花(のうぜんか)  

その昔昼寝する子等うちわ風         輝

 

学校より休みが長い国会は

太郎なら感染は爆発といい         沖 阿