新型コロナウイルス? 

へ~っ、コウモリ発の病原菌…? 

と、ほんの数カ月前には、中国の武漢で起きた状況を

対岸の火事のように見ていた。

ところが、あれよ、あれよ、のまに

世界中の人たちが、み~んなこの災難に巻き込まれ、当事者になってしまった!

パンデミックだなんて、そういう現実が起こるなんて信じがたい。

そもそも、いずれ起こるかもしれないとんでもないことは、

原発事故の連鎖とか、核の暴走とか、ミサイルの乱発とか、

AIロボットの反乱とか、

そんな終末的というか、SF的というか、そういう世界のイメージだった。

なのに、ウイルスとは……。

世界中が、今回ばかりは意表を突かれてしまった気がする。

これがリアルな世界のありようだと、あからさまになってしまった感じ。

思った以上の脆弱さに、なにか茫然としちゃいそうだ。

で、この渦中ですぐに思い出したのがカミュの「ペスト」。

70年も前に書かれた作品だけれど、この本が目下ベストセラー中とか。

私までが、すぐ思い浮かべたのだから、やっぱりね、と言う感じか。

思えば、団塊世代が若者だった頃、

カフカとかカミュとかが、不条理文学とか呼ばれてとても流行っていたのだ。

実は、私は、数年前に再読なんかもしてしまっていた。

誰かが「カミュのペストってさ、どんな結末だったっけ?」と言い出して、

じゃあ、読んで思い出そう、となって再読したのだった。

読んで、相当な衝撃だった。

この小説は、病原菌に汚染され、閉鎖された街の中で

様々な生き方を選んだ人々の群像を描いたもの。

自分の役割を果たそうとする医師はどこまでも誠実で、

衛生隊に志願した活動家は、自分の行為の思想性を常に問わずにいられない。

偶然、街に閉じ込められた旅人は、恋人に会うため必死で脱出を試みるが、

死にゆく人を見捨てられない。

この厄災は神の意志だという神父は、治療を拒んで神に殉じ、死んでいく……。

いろんな立場の人が、危機状況の中で自らの生き方を真摯に問い、

迷い、議論する。

必然的に読み手は

「あなたはどのタイプ?」

「小説の中の誰の生き方に共感する?」

と問われてしまうことになる。

思えば、今回の新型ウイルスに遭遇した中国の武漢でも、

医療崩壊した中で必死で戦い続け、

自らウイルスに感染して命を失った医師が何人もいた。

まさに、最前線では「ペスト」の世界が再現された状況だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と思いながら、約束をなにもかもキャンセルして、

なすべきことがわからない私は、

芽吹きの美しい自然の中を一人でドライブに明け暮れている。

どこへ行っても、誰にも会わない過疎地では、ウイルス禍は遠い。

でも、世界を制覇しちゃったこの見えざるウイルス騒動は、

世界のありようを変えてしまうのだろうか、どうなのだろうか……。

柄にもなく、急に思索的になってしまっているこの頃の私だ。