◆俳諧「奴凧」
富士ながめ雪とたわむれ甲斐の山 佐藤 春生
黄水仙汚れを知らぬ美少年 吉沢緋砂子
ひとり居の障子開ければ小正月 鈴木 翠葉
名はふぶき山の廓の雪女郎 島村小夜子
寒風に拍子木の音(ね)や星を割る 天立 美子
畦道に芹摘む指の悴(かじか)みて 勝 太郎
ドンマイと七つ転んで春に立つ 平井喜美子
寒の水己(おのれ)の邪気を封じ込め 小林 今浬
奥久慈の朝日に輝き「シガ」流れ 小檜山游生
草葺の庭紅梅の盛りなり 湯浅 辰美
◆夏日俳句会 望月百代選
空の青水の青もて野辺焼けり 《選者吟》
蠟梅や老いても増ゆる縁あり 岩下三香子
ひひなの間ざしき童子も来てゐたり 大石 洋子
春愁や居座つてゐる五十肩 太田 住子
春の虹留学決めし十六才 長木 和代
街燈の笠に番や余寒雲 菊井 節子
春おぼろ鶏鳴き交はす小屋と外 北原 弘子
鳶ゆるゆる島に水仙匂ふ道 河野 悦子
大海へ大河かがよふ寒の明 古在 路子
乾燥芋焙り建国記念の日 佐藤 弘子
缶コーヒーごとんと落ちる冬の朝 佐薙 拓三
蛇穴を出づ不可解なオブジエかな 島田富美子
作業衣や三寒四温のペンキ散り 鈴木 るる
受験子の二礼二拍手おぼつかな 築 幸枝
空の色降りて来しごと芝青む 恒任 愛子
強風におびえてをりぬ犬ふぐり 西岡千代子
師の曰く明眸の作家生れて春 間部美智子
揺れやすき花を好みて卓に春 丸澤 孝子
芽吹き初む姪の未来に向き合へり 梁原 善子
思ひ違ひ解けて爆笑春きざす 吉田恵美子
春めくややさしさ生るる枝の先 米倉 典子
寒明の空を平らにフリスビー 渡辺 紀子
◆短歌「合歓の会」 久々湊盈子選
アメリカ楓(ふう)のイガイガの実を拾いきて悪しき方位に転がしておく 《選者詠》
バスのなか親しくなりたる人増えて松戸に長き歳月を住む 小早川廸子
「戦争を知らない人が戦争をする」古老のことば深く諾(うべな)う 川島 光子
鬼も貧乏神も仲良く一緒に住みおれば怖いものなし豆など撒かぬ 田中 房枝
炊飯器・電気ポットに洗濯機仕上がり告げるメロディー溢る 天野 克子
諍いて安居(あんご)のごとく過ごす日をけ・せらとわらう冬の青空 中川 尚美
◆川柳「暁子の会」 米島暁子選
長寿国オアシスになるケアハウス 《選者吟》
一目惚れして初めての恋心 智江子
吟醸酒下げて竹馬の友が来る 章 一
初恋は壊れ易くてシャボン玉 春 樹
酒を飲み酔って泣きたい時もある 寿 恵
初恋もいい晩恋はもっといい 道 子
旅先のほろ酔いの妻惚れ直す 由利子
初恋はあまりに遠く霧の中 とし子
酒煙草女を断って医者通い 芳 子
◆つれづれ句会 ― 投句 ―
陽炎か眼鏡の縁に涙かな
書を開く久しきければ目借時 稲 子
陽の匂ひ毛布に込めて介護かな
逝く人の別れは哀し雪の片(ひら) 春 水
若草山火の粉舞う夜に頬こがし
老夫婦喉つまらせつつ恵方巻き かすみ
耳の日や卒寿迎えて穏やかに
弥生かな早春賦を口ずさみ せいじ
深川や商い参道初不動
夕暮や楽しむおでん酒に酔ふ 清水 茂
春めいて軽装目立つ午後の街
申告書メールで送る春の夜 とにお
初観音仲見世で買う干支の酉
帯とけば副豆一ツ転(まろ)びいで 三 島
久々の富士輝きて二月尽
音に酔ふライヴの熱気雪乱舞 卯 月
通勤時梅にいやされ早い朝
親友と春まだ遠く早くこい かもめ
枝切りや硬きつぼみも春と呼ぶ
春名のみあられもなき声猫の恋 桔 葉
バレンタインデー本命のチョコ一つなし
木の芽時ひそむ白猫福を曳き 鳴 砂
窓の内のぞいて落ちる雪の群れ
着膨れや着る脱ぐ一人重い日々 眞 美
椿路ぽってり花冠色あせて
芽吹季(どき)まどろみつつの左見右見(とみこうみ) 輝
石原氏若き名誉は今いずこ
仕事よりゆとりが欲しい日本人 龍
呼称替え朝三暮四のシルバー策
読めないよ神経衰弱トランプで 沖 阿
