◆俳諧「奴凧」
武蔵野の電車を写す植田かな 佐藤 春生
庭の角(すみ)一株だけの茶摘みかな 吉沢緋砂子
峠路を下(お)りて植田の水ひかり 鈴木 翠葉
万緑やどさりと吾を預けたし 島村小夜子
春昼やテレビの音も遠ざかり 石原 桂里
山桜家族を見守り五十年 天立 美子
日脚伸ぶ母の遺影の眼の強き 勝 太郎
かたくりや少女の私そこにいる 平井喜美子
振り付けを風にまかせて藤の舞 小林 今浬
新緑の森が吸いとる笛太鼓 小檜山游生
にはか雨いっせいに鳴く雨蛙 湯浅 辰美
◆夏日俳句会 望月百代選
Mといふイニシャル母の日のタオル 《選者吟》
緑雨かなだるま印の木綿糸 岩下三香子
ふらここやこのしあわせを逝く日まで 大石 洋子
子の病癒える兆よ聖五月 太田 佳子
夏服のマネキン派手なポーズとる 小川トシ江
若沖の鶏の一声夏立ちぬ 長木 和代
雨しとど古木の幹に苔の花 菊井 節子
よく通る苑の放送ポピー咲く 北原 弘子
五月晴樹木葬てふ墓を見に 熊谷多恵子
思い起す人あり白山吹の咲く 河野 悦子
水紋のほぐるにいとま薄暑光 古在 路子
小判草海へ近道してゐたり 佐藤 弘子
もと五人今は二人の豆ご飯 佐薙 拓三
七人の敵の中へと更衣 菅野 裕夫
万緑へ佇たば全身濡るるごと 鈴木 るる
母の日や母てふ文字の肩下がり 築 幸枝
点々と風をこぼして藤の花 恒任 愛子
露座仏に降る濃淡の夏落葉 西岡千代子
夏満月動体視力落ちてをり 間部美智子
青田風むかし昔と吹ひてをり 丸澤 孝子
泣きやまぬ子に添ふ母の町薄暑 梁原 善子
世界首脳や栄螺の匂ひ志摩の浜 山本順一郎
ぼうたんや長姉の逝きし歳となる 吉田恵美子
白玉や母の面影うすれゆく 米倉 典子
初夏の波音はらむ砂防林 渡辺 紀
◆短歌「合歓の会」 久々湊盈子選
地震(ない)やまぬ肥後には降るなわが庭の
海芋(カラー)を腐(くた)す今日のさみだれ 《選者詠》
五十年前わが植えし藤は春の使者
道ゆく人も足をとどめて 川島 光子
東風(こち)吹きて窓より見ゆる若みどり
心地よき季(とき)ながく続けよ 小野 淳子
ふるさとの誇りでありし熊本城
四季おりおりの眺めを惜しむ 小早川廸子
オーガンジーのシェードのごとき日の名残り
江戸川べりに靄たちこめて 大江 匡
春キャベツに指さしこめばきしきしと
ひと葉ひと葉に水の音する 飯島 和子
◆川柳「暁子の会」 米島暁子選
本当の孤独家族の中で知る 《選者吟》
芸の道縮こまるなと師の教え 鈴木 綾子
鍋からの旨みいただく旬の味 花嶋 義男
使い捨て次は我が身とパート主婦 江川 輝子
鍋磨き今日のストレス吹き飛ばす 中山 秋安
縮こまる背なを伸ばして仰ぐ富士 前川 育子
鍋料理最後おじやで皆笑顔 石崎 克也
年重ね背が一センチ縮まった 藤井 敬子
寒い日は鍋に限ると言う五才 正木ふう子
◆つれづれ句会 —投句—
今朝の夏潜(くぐ)る指先水やさし
新茶汲む泣いて笑って幾年を 稲 子
葉先まで雨粒連らね大けやき
作法なく縁先で飲む新茶かな 輝
こぬか雨紫陽花映える昼下がり
短夜に屋台で友と飲み明かす とにお
初夏や一茶をたどるウォーキング
つつじ咲く東福寺坂青い空 清水茂
芍薬の崩れし朝の青畳
ベランダに泳ぐやミニの鯉のぼり 三 島
つつじ咲く目にも鮮やか根津神社
達筆の友の葉書に春の庭 かもめ
囀りや湯槽(ゆぶね)に在りて聴きにけり
紫陽花の本土寺となり人集い せいじ
黄色帽川原でたんぽぽ摘む子たち
こでまりのゆらりと揺れて風薫る かすみ
次郎長伝ひと節唸り新茶呑む
母の日やこの日は妻が母になり 鳴 砂
風薫る箒目長し参道に ★★ルビ「ほうきめ」
甘酒のほどよい温み長寿会 トシ子
足利の藤の波揺れ霊浴びる
坂川の大亀浮かぶ立夏かな 卯 月
手づくりのポット彩る新茶かな
風薫りこの空どこまで続くやら 桔 葉
青時雨こころ定まる坐禅かな
けやき道四十年の木下闇(こしたやみ)凡山人
憲法は国民の声第一に
安倍首相あなたは戦争知らぬ人 龍
「どろぼう」の声におどろく午前様
留守番の犬の命令「頸を揉め」 曲 坂
ハンセンに権力かばう最高裁(ライ病と反戦)
恰好より中身問われる知事外遊 沖 阿