仕上げ磨きをしていると、よく歯茎から血が出ます。そんなに力を入れて磨いているつもりはないのですが。たまに口が臭いこともあり、歯周病かしらと気になっています。子供にも歯周病はあるのでしょうか? 歯医者さんに連れていったほうがよいですか。(36歳主婦/4歳女児)
4歳は乳歯が20本生え揃ってから一年ほど経ち、
永久歯が生えてくるのはまだ二年ほど先になるという年齢で、
お口の中は比較的安定している時期です。
この時期に歯ブラシによる刺激で歯肉から出血し口臭もあるのは、
歯肉炎が起きているからでしょう。
ほとんどの歯肉炎は、歯と歯肉の境目に残った歯垢が原因です。
歯垢は単なる食べかすや汚れではなく、生きている細菌のかたまりです。
細菌が出す酸によりエナメル質が溶かされて虫歯になり、
細菌が出す毒素によって歯肉に炎症が起きて歯肉炎になります。
しっかりとブラッシングをしているつもりでも、
歯と歯肉の境目には歯垢が残っているものです。
歯と歯肉の境目の歯垢を確実に落とすこと、
さらに歯肉のマッサージも意識してブラッシングするとよいでしょう。
また歯肉炎は、
歯間乳頭部と呼ばれる歯と歯の間の歯肉から発生するという調査結果もあります。
以前にも書きましたが、歯と歯の間の歯垢は歯ブラシだけでは落とせず、
デンタルフロスの使用が不可欠です。
歯ブラシの後にデンタルフロスを使ってみると、
こんなにも磨き残しがあるのかと驚かれると思いますよ。
そして、デンタルフロスに付いた汚れのにおいを嗅いでみてください。
それが口臭の原因だと分かるはずです。
歯と歯肉の境目は、硬い歯と柔らかい粘膜が接している部分で、
人体で最も結合が弱い箇所です。
そこに炎症があるとその結合は簡単に壊され、歯周ポケットができます。
歯周ポケットができると、
その中に歯周病菌が住みついて繁殖して炎症を拡大させ、
さらに歯周ポケットが深くなっていくという悪循環に陥ってしまいます。
歯肉炎は歯周病のごく初期の状態です。
この時期に適切な治療と正しいメインテナンスを行えば、
元の健康な歯肉に戻すことができます。
しかし、歯肉炎の状態が5年10年と続くと、
歯肉の下にある歯槽骨にも炎症が波及して歯槽骨が溶け始め、
歯根と歯槽骨を繋いでいる歯根膜も破壊され、
歯周ポケットから排膿がみられるようになります。
こうなるともう元の健康な歯肉に戻すことはできません。
虫歯も歯周病も初めのうちはほとんど自覚症状がありません。
症状が出るのはかなり進行してからです。
健康な状態をいつまでも維持できるように、
また、疾患の早期発見・早期治療のためにも
定期的な歯科検診を受けられることをお勧めします。
★回答者……
1953年東京都生まれ。1979年、北海道大学歯学部卒業。
北海道大学歯学部小児歯科学講座入局。1984年、新松戸
で「小児歯科ポプラ診療室」を開業。日本小児歯科学会認
定小児歯科専門医。