2歳ごろからトレーニング箸を使っています。だいぶ慣れたように見えたので、普通の箸を持たせてみたところ、うまく使えず、それ以来トレーニング箸もいやがってフォークとスプーンばかり使います。たまに気が向いて箸を持つと、握り箸になっています。幼稚園では、ほとんどの子が箸とトレーニング箸を使って食べているようですが…。お箸は何歳ぐらいまでに上手に使えるようになればいいのでしょうか。お箸を使うように促すコツはありますか?(38歳主婦/3歳男児)

 

近年の子どもの問題として、生活習慣や食生活の乱れがあります。

食の問題は健康面につながりますので、

お母さんとしても「食べる・食べない」が気になるところですね。

また、幼稚園に入園をすると給食やお弁当があります。

お母さんの目の届かない所ですから、

「それまでに自分で食べられるように、できれば箸で…」

と願うことも当然のことだと思います。

厚労省の「食を通じた子どもの健全育成」(H16)では、

①空腹状態をつくる生活リズムの確保

②食事を味わって食べる

③一緒に食べたい人がいる

④食事づくりや準備に関わる

⑤食生活に主体的に関わる—の5点が挙げられています。

箸の使い方など技術的なことの前に、

まず食に対する興味や関心を持つこと、

「食べたいな」「おいしそうだな」という気持ちを大切にしたいものです。

楽しい雰囲気の中で、きっと挑戦してみようという気持ちになると思いますよ。

さて、食事についての発達のおよその目安ですが、

「1歳ごろは自分で食べたがる」

「2歳後半〜3歳になるころは、だいたい自分で一人で食べられる」

「4歳ごろは、一人でだいたいこぼさないで食べる」といったところです。

「およそ」「だいたい」「~歳ごろ」と曖昧な言葉ばかり並べましたが、

それだけ個人差があるということです。

ではご質問にあるように、いつから箸が持てるようになるのでしょうか。

箸は利き手で2本を持ち、主に人差し指と中指で持った方を動かして

食べ物をはさむようにつまみます。まず1本の箸を思うように動かしたり、

グーパーのように動かしたりすることができないと食べ物を挟むことは難しいでしょう。

手の握力や、巧緻性(動作を調整して目的を達成する能力)、

目と手の協応性(目で見て考えたように手を動かす)といったことが必要になります。

こうした面が育つと箸を使えるようになるのではないでしょうか。

でも食事のときにいつも、こうした訓練を行っていたのでは、

「食べたいな」「おいしそう!」といった気持ちも萎えてしまいますよね。

そこで幼稚園や保育所の遊びの中、あるいはご家庭の生活の中で、

これらの発達を促すヒントをご紹介しましょう。

例えば洗濯バサミを使って遊んだり、洗濯物を干すのを手伝ってもらったりしてみましょう。

一見、箸の練習とは関係ないようですが、握力や思った通りに指先を使う練習になります。

それも「課題」でなく「遊び」なので、面白がりながら何度も動かすことになり、

少しずつ箸を扱うのに必要な力がついていくと思います。

トレーニング箸は、手指の動かし方のヒントになるかもしれません。

これを使うことで安心して楽しくおいしく食べられるなら使ってよいと思います。

また使わなくても一人で食べ、箸を使う意欲があるのなら、あえて使う必要もないでしょう。

 ★回答者……

しんまつど幼稚園園長/寺田美子先生
1963年生まれ。十文字学園女子短期大学幼児教育学科卒業。聖徳大学大学院教職研究科教職実践専攻修了。現在学校法人松本学園新松戸幼稚園園長、及び聖徳大学、杉野服飾大学非常勤講師。日本保育学会、日本教材学会、国際幼児教育学会、日本フルート協会会員。日本音楽教育メディア学会。