幼児・児童期は詰め込みよりも実体験

 

これまで「考える」とはイメージを操作することだとお伝えしました。

ですから、考えるためにはイメージを再現する必要があるということもお伝えしました。

そしてイメージを再現するためには、「実体験」が必要です。

実体験がないと貧弱なイメージの再現しかできません。

「雪」に触れたことがない南国の人が「雪」を明確にイメージできないのと同じです。

私は「マイナス40度の世界」があるのは知識としては知っていますが、

イメージすることができません。

実際にその気温を感じた経験がないからです。

実体験には説明できないほど複雑な情報が含まれています。

森の中で木漏れ日を感じながらのんびり散歩をするだけでも、

脳は複雑な処理をしています。

あまり好きな言葉ではありませんが「空間認識力/空間把握力」などは、

パズル問題をやるより自然の複雑な空間を味わうほうがよっぽど身につきます。

早期教育と呼ばれるものは、単純で簡単な情報の処理が中心です。

フラッシュカードなどはその代表例です。

素早くカードを見せて名前を読み上げる…。

何の意味があるのでしょう。

野菜のカードを見せて覚えさせるよりも、

本物を手にとらせたほうが情報量は多く、

豊かなイメージとして蓄積されていきます。

最近は、小学校の先取りの勉強(文字・漢字・計算など)をさせたり、

英語の勉強をさせたりする幼稚園が人気です。

ほかにも子どもたちがイメージできない「四字熟語」や

「慣用句・諺」などを大声で暗唱させたり、

描く手順が決められ全員同じように仕上がる「上手な絵」を描かせたり、

親向けとしか思えないような無茶な指導をしているのを見ると心が痛みます。

幼児・児童期の実体験は、

知識の詰め込みとは比べ物にならないほどレベルの高い、豊かな教育なのに、

その時間を奪っているわけです。

豊かなイメージを蓄積する時期に、大量の貧弱な知識を詰め込んでいるのです。

 

イメージ力を育てる

 

「実体験」の時間を増やすこと以外に、

家庭で簡単にイメージ力を育てる方法があります。

「絵本の読み聞かせ」です。

お母さん、お父さんが本を読んであげる時、

子どもはストーリーを味わいながら

頭の中でイメージ再現を繰り返しています。

楽しくイメージ再現の練習ができるので、是非やってあげてください。

小学校に上がって自分で本を読みだすと同時に、

読み聞かせをやめてしまう家庭も少なくないと思いますが、

できれば小学3年生ぐらいまでは、また子どもが嫌がらなければ

小学生の間は続けてもあげてよいでしょう。

低学年の場合、

「自分で絵本を読む」のと「親に絵本を読んでもらう」のは全然違うことなのです。

まだ上手に読むことができない低学年は、

読むことにエネルギーを使ってしまい、言葉をイメージにすることができないのです。

ですから、読んだけど内容が全然頭に入ってこないということがよくあります。

また、大切なことは、純粋に楽しむために「読み聞かせ」をしてほしいということです。

なんでも勉強に絡めて「どんな話だったか」「どんな登場人物がいたか」

などを確認する人がいますが、それはやめたほうがよいでしょう。

理由は……子どもの気持ちになって考えてみればわかりますよね。