子供にとってメディアはなぜ危険か

 

子供たちは、テレビ、テレビゲーム、携帯用ゲーム、DVD、インターネット、スマホ、タブレット端末など、様々なメディアに囲まれています。
家庭学習ではタブレット端末を使った通信学習が増え、塾でもパソコン教材や動画やアニメーションの学習が主流になりつつあります。
小・中学校のクラスには、電子黒板や大型モニターが置かれています。さらに国は「2020年までに生徒1人1台のタブレット」を目標に掲げ、佐賀県武雄市や東京都荒川区のように前倒しで取り組んでいる地域もあります。

インターネット広告大手インタスペースが2014年3月に行った「子供のスマートフォン利用調査」では、0歳児の24%、1歳児の74%、2歳児の85%がスマートフォンを利用していることが分かりました。
情報化社会に対応できる子供を育てようとばかりに、タブレットを幼稚園に導入する例も増えています。幼児向けのソフト(アプリ)もたくさんの種類があります。
遊びも学習も、完全にデジタルメディアが主流になってきました。

しかし今から10年前の2004年に、日本小児科医会は次のように提言しています

1)2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控える。

2)授乳中、食事中のテレビ・ビデオの視聴はやめる。

3)すべてのメディアへ接触する総時間は1日2時間までが目安。

4)テレビゲームは、1日30分までが目安。

5)子ども部屋にはテレビ、ビデオ、パソコンを置かない。

6)保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールを作る。

提言の中には、『メディア漬の生活では、外遊びの機会を奪い、人とのかかわり体験の不足を招きます。実際、運動不足、睡眠不足そしてコミュニケーション能力の低下などを生じさせ、その結果心身の発達の遅れや歪みが生じた事例が臨床の場から報告されています。(社団法人日本小児科医会HPより)』とはっきり書かれています。
小児科という最前線で子どもたちを診続けているお医者さんたちが、『心身の発達の遅れや歪み』の原因として、メディアの危険性を訴えているのです。

 

単調なパターン信号への対応が、思考の基本回路に…

 

勉強だから、知育アプリだから、ということは関係ありません。
刺激的な音と光で子供たちを惹きつける魅力的な、しかし単調なパターン信号は、健全に育った大人の心と脳には影響は少ないかもしれません。しかし、今まさに心と脳と体を作り上げている仮想世界と現実世界が曖昧な子供たちにとっては、その単調なパターン信号への対応が、一生使う思考の基本回路になってしまいます。

ヒトから人間に育て上げるには、機械に子守りをさせてはいけないのです。

学習教室にやって来る子達を見ていても、小さいころからメディアに触れている子たちと、メディアを遠ざけて育てられている子たちの違いは一目瞭然です。
メディアにどっぷり浸かって育った子は、

反応が鈍いです。

表情が乏しいです。

生気が感じられず虚ろな目をしています。

焦点が合いません。

「めんどくさい」が口癖です。

一方的なコミュニケーションが特徴です。

もちろん例外はいるでしょう。しかし私の教室に、普通にテレビを見て、普通にテレビゲームで遊んで、普通に学校の宿題をやってきた子供たちの中には、反復学習で成績の良い子はいましたが、習っていない問題を創意工夫で解ける子は一人もいませんでした。

2013年の国の調査では、ネット依存の中高生は8.1%(注1)、全国では51万8千人と推計されています。「病的な使用」と判定された子供が8.1%ですから、依存になる前の予備軍はさらにたくさんいることでしょう。

あなたのお子さんは大丈夫ですか?

 テレビニュースがもたらす危険

 

メディアの危険に関してテレビのニュースも挙げておきます。
ハッピーな出来事ばかりであればまだよいですが、残念ながら大人でも胸がむかむかするような異常な出来事や映像が「普通」に流れてきます。子供の心にどのような影響を及ぼすか、ぜひ一度考えてみて欲しいです。(注1)中高生への質問事項

 

(注1)

「はい」か「いいえ」で回答。「はい」が5項目以上ある場合は「病的な使用」と判定

Q1 インターネットに夢中になっていると感じるか

Q2 満足を得るために、ネットを使う時間を長くしていかなければならないと感じるか

Q3 使用時間を減らしたり、やめようとしたりしたが、うまくいかなかったことが度々あったか

Q4 ネットの使用をやめようとした時、落ち込みやイライラなどをかんじるか

Q5 意図したよりも、長時間オンラインのじょうたいでいるか

Q6 ネットのため、大切な人間関係、学校、部活のことを危うくしたことがあったか

Q7 熱中しすぎていることを隠すため、家族や先生に嘘をついたことがあるか

Q8 嫌な気持ちや不安、落ち込みから逃げるためにネットを使うか