読み・書き・計算」を徹底的に反復しても、
応用問題は解けるようになりません

問題:きよはる君は、ひろあき兄ちゃんが泣くとつられて泣いてしまいます。ひろあき兄ちゃんが1回え~んと泣くと、きよはる君は3回え~んと泣きます。まひろ兄ちゃんが隣の部屋で聞いていたら、12回え~んと泣く声がしました。きよはる君は何回泣いたでしょうか?

前回紹介したこの問題を、次男が年長(6歳2ヶ月)の時に解いたのが下の絵です(カラーの線は解説用に引いたものです)。
問題を1文読んだら絵にして、また1文読んだら絵にして…を繰り返して解いています。
「ひろあき兄ちゃんが1回え~んと泣くと、きよはる君は3回え~んと泣きます」で赤枠部分を書き、
「12回え~んと泣く声がしました」で、青枠部分に8個「え~ん」を書き足しました。
そして、「きよはる君は何回泣いたでしょうか?」で、緑枠のように丸で囲いました。
あとはピンクの部分の「え~ん」を数えて「9かい」を導き出しました。

考える500

 

 

 

 

 

 

 

 

 
通常、学校で習うように『式』で解くとしたらこうなります。

1+3=4、12÷4=3、 3×3=9

次男には先取り学習を一切させていないので、かけ算や割り算はもちろん、足し算や引き算もできませんでした。でも、式はたてられなくても「言葉をイメージ(絵)にして答えを探す」ことを知っていたので、自力で答えを導き出すことができたのです。
ところが、小学生になって足し算・引き算を習った低学年の子供たちは、文章問題を解くとき、こんなふうに習うことが多いようです。

「文章にある数字に丸をつけ、足し算か引き算かわかる言葉に線を引いて式をたてなさい。【みんなで】【ぜんぶで】【あわせて】は足し算、【のこりは】【ちがいは】【さは】は引き算です」

このようなやり方を教わった子供たちは、そのパターンにあてはまる問題なら式をたてられますが、パターンから外れた問題に出合うと混乱します。こうしたやり方を教わっていない子供でも、同じような問題を徹底的に反復練習させられるケースが多いため、やはり習った問題しか解けなくなってしまいます。

解き方を知らない問題でも、場面をイメージして答えを探す力は本来備わっているのに、式で解かなければいけない、習った解き方で解かなければいけない、という間違った指導で、本来の力を発揮できなくなっているのです。

次男は、この問題を解いた時、問題文をすらすらと読むことはできませんでした。フリガナがないと読めない漢字ばかりでしたし、計算も全く教わっていませんでした。それでも「言葉をイメージに再現する」力が育っていたので、その力を使うことができたのです。

小学生の宿題は、教科書の音読、漢字の書き取り、計算問題の反復練習が主流です。しかし、小学校に入学してから「読み・書き・計算」を徹底してきた子供たちが、小学校の高学年になって授業についていけず、塾に通いだすという現実があります。そして中学生になると過半数の子供たちが塾通いを余儀なくされています。
すらすらと抑揚をつけて上手に教科書を読める子が、たくさんの漢字を知っている子が、素早く計算をできる子が、簡単な文章問題を解くことができないのです。「言葉をイメージに再現」することができないのです。
「読み・書き・計算」が基礎学力というのは本当でしょうか? 基礎とは、応用できるものでなければなりません。
残念ながら「読み・書き・計算」を徹底的に反復しても、応用問題は解けるようになりません。それどころか、柔軟な考えを妨げる害になりうるのです。これが、子どもたちの学力不振の原因の一つなのです。