すると、おふくろは必ず
「食べてかないかい?」と…
僕は、みんなでわいわい言って食べるのが好きなんです。
おいしい店があると聞いたら、まず、行きます。
で、とてもおいしかったら、今度は誰かを連れて行きたくなる。
だから、僕が連れて行くのはおいしい所ばかり(笑)。
みんな喜ぶし、僕も楽しい。
パリの友達から「ロブションとタイユヴァンの予約がとれたから来ない? 」
と連絡があって、そのためだけに行ったこともある。
お正月はここ数年、子供や孫たちを連れてモルディブに行ってますが、
食事に関しては全部、僕が事前に調べて予約を入れておきます。
この前、社員たちとニュージーランドに行ったときも、
みんな勝手に注文して、 勝手に飲んで、声がだんだん大きくなっていって…(笑)。
だけど、想い出の食卓を1つだけ挙げるとしたら、やっぱりおふくろの味だなあ。
おふくろの味といえば、最初に思い出すのがカレー。
それも肉なんか入ってない、じゃが芋と人参と玉ねぎだけのカレー。
後で生活が少し楽になってきたら、肉も少し入ってたかな?(笑)。
でも僕は、じゃが芋さえ入ってればよかった。
じゃが芋、好きなんです。
親父は小金で薬局を創業したけど、政治に興味があって、
そのうち町会議員になって、県会議員になって(後に松戸市長)。
おふくろは、店を切り盛りしながら親父の後援会の仕事を手伝い、
兄と僕と弟と男ばかり3人の子供とおばあちゃんの面倒みてた。
バイタリティがありましたね。
店の裏が台所で、10人は座れる大きなテーブルがあって、週に一度はカレーだった。
とにかく忙しかったからね。
簡単にできるものを食べさせられてたわけだけど(笑)、おいしかったなあ。
食事中も、製薬会社の人とかいろんな人が訪ねてきて、
するとおふくろは必ず、
「食べてかないかい?」って声を掛けるんです。
あの時代、みんなそんなに裕福じゃなかったし、
外で食べる所もあまりなかったからね。
お客さんが増えると、僕らは急いで食べて席を空けてた(笑)。
こんな家に嫁いできた女房(しんまつど幼稚園理事長)も、
料理は手早くておいしいですよ。
ただ、うちはずっと共稼ぎでしょ。
女房のほうが帰りが遅いこともある。
待ちきれないときは、自分で「ボンカレー」をぱぱっと作って食べちゃうんです。
といっても、ボンカレーと「サトウのごはん」を温めて、
あとはビールかワインの栓を抜くだけだけどね(笑)。
どうしてボンカレー?
おふくろの味に近いから。
いろんなレトルトカレー食べたけど、これが一番おいしい。
大きなじゃが芋が入ってるし(笑)。
ゴールドじゃなくて普通の。
もう沖縄でしか買えないから 出張の時にまとめ買いします。
うちの非常食兼常備食ですね(笑)。
(インタビュー:2014年2月10日)
まつもと なみお★プロフィール■1943年3月千葉県松戸市生まれ。1965年日大理工学部薬学科卒業と同時に薬剤師免許を取得、有限会社薬局マツモトキヨシ入社。1978年学校法人松本学園理事長。1985年株式会社ユアースポーツ代表取締役。1999年日本チェーンドラッグストア協会会長。2001年株式会社マツモトキヨシ代表取締役社長。2007年株式会社マツモトキヨシホールディングス代表取締役社長。2009年同社代表取締役会長兼CEO。2014年同社代表取締役会長。「仕事が忙しくなればなるほど、遊びも忙しくなる」の言葉通り、趣味はゴルフ、ヨット、水泳、ダイビング、食べ歩き…と多彩。