牛コマ四百匁と白菜、お豆腐、白滝、ネギ
ぐつぐつぐつぐつ煮て…感動的なおいしさ!
専業主婦20年、漫才コンビ(東 京太・ゆめ子)を組んで20年。
なぜ、漫才?
あるとき、漫談やってた京太(夫)の地方公演についていったの。
で、客席で観てたら、京太、面白かった!
じゃあ、私もやってみようかなって、
カーンタンな気持ちでスッと入ったら、周りが「えーっ」って驚いた。
それで賞(第65回文化庁芸術祭賞大賞)までいただいて…。
いや、あんなびっくりしたことなかったわね(笑)。
で、何の話? そうそう、想い出の食卓ね。
私、生まれは門司で、七人兄弟のまん中。
兄も姉も妹も弟もいるの。すごいでしょ。
広い敷地に借家が8軒あって、うちはその1軒。
子供がわんさかいてね。毎日、まっ暗になるまで遊んでました。
まん中に大きな井戸があって、母親たちはそこで洗い物したり、おしゃべりしたり。
母は、3年おきに子供を7人生んでた。
いま考えると大変だったろうなって思うけど…。
とにかく、とても個性的な人でしたね。
母のごはんで覚えてるのは、ご汁でしょ、
小魚の南蛮漬けでしょ、
鯖のあらを白菜やネギと煮たのでしょ、
クジラの皮と大根を煮たのでしょ……
ああ、おいしかったなあ。
食べたいなあ。
六畳の部屋に大きなちゃぶ台があって、おひつが置いてあって、
私が座るのは、いっつもおひつの隣。
ごはん、自由に食べられるから。
「みんなのよそってあげる」って言って、自分のだけ、ぎゅっぎゅっと詰め込むのね。
きょうだいから「あーちゃん(本名・アサエ)はズルかった」って、いまだに言われる。
私、けっこう要領よかったみたい(笑)。
そういえば、うちの年越しはすき焼きだったの。
年に一回だけのすき焼き。
おっきな鉄鍋に牛肉と…いま考えると牛コマだけどね、
白菜とお豆腐と白滝とネギを入れてぐつぐつぐつぐつ煮て……
もう、感動的なおいしさ!
牛コマ、どれだけ使ってたか、今でも覚えてる。四百匁(1・5kg)。
お駄賃目当てに、いつも私が買いにいってたから。
「ごはんよー」って呼ばれると、まっ先におひつの横に座ってたわね(笑)。
で、お鍋が来るでしょ? ちゃぶ台に置く前からもう、
あのお肉は絶対に私が取るって決めてましたもん。
腕まくりして。
全員揃っていただきますをしたら、狙ってたお肉をパッと取って、
ご飯に乗せてサッと食べる。
牛コマだから、縮れてくっついて固まってるわけ。
ここがポイントね。
みんなが箸を入れると、コンビーフみたいに崩れちゃうから、
固まってるうちに早く取らないといけない。
そこまで深く考えてたの、きょうだいの中で私だけだったと思うな(笑)。
で、さあ次!って取ってると、「肉ばっかり食べてる!」って言われる。
そこで、技を使うの。白菜とかに肉を絡めて、見えないようにして食べる技(笑)。
和やかとか、穏やかとか、そんなもんじゃない。食べ終わるまで喧嘩でした(笑)。
だって、年に一回のすき焼きだもの。
今も、きょうだいが集まるとすき焼きですね。
せっかくだからっていいお肉にするんだけど、
みんな、1枚で十分とか言って……。
つまんないわねえ。
振り返ってみると、ほんとにあっという間ですね。
(インタビュー:2014年2月26日)