昨年末、某新聞社の人から電話があった。

目下、連載中の対談相手を誰にしましょうか? という案件だった。

担当の人から「著名な方で、昔、親しかった方などおられませんか?」

と訊かれて当惑した。

そんなに突然、人に知られている昔の友人、と言われてもなあ……

そもそも、私自身がさほど人に知られているような人とは言えないしなあ……

誰かいるかなあ……? 

テレビに出ている人なら、みんなに知られている人と言えるかもしれないなあ、

などと考えていたら、不意に吉永みち子さんの顔が浮かんだ。

テレビのコメンテーターとして、朝のワイドショーに出演している彼女をいつも見ていたからだ。

その度に、元気そうだなあとか、ずいぶん慣れた様子でコメントをしていてすごいなあ、

とか思ったりしていた。

昔、ノンフィクションの物書きの卵たちが集まって、飲んだりしていた頃があり、

その中に彼女もいたのである。

でも、彼女は私のことを覚えているかなあ? 

それが問題だった。

そう思いつつも、私は彼女の電話番号を探し出し、連絡を試みた。

そのあたりは職業病というか、有名、無名にかかわらず、臆せずだれにでも電話をする私なのである。

名前を告げると、電話口から思いがけず、元気な声が返ってきた。

「あらあ、久しぶり!」

おお、覚えていてくれたのか、とまずはほっとして、

新聞の対談相手になってほしいと伝えてみた。

すると、同業者は話が速い。

「いいよ、そういうことでもないと会えないし……」

そんなわけで、当日、指定された新聞社のロビーで彼女と再会したのだけれど、

会ったとたん、たちまち昔の気分に舞い戻ってしまった。

思い起こせば、彼女と出会ったのは、私がふらふらしていた頃で、

たぶん、お互い息子もいなかった。

いや、その息子の父親に出会ってさえもいなかった頃だと思う。

30年以上も前か? いや、息子の歳を考えると40年以上前か……。

つまりは、お互いにテレビで見たり、雑誌で見たりしていただけの仲なのだ。

ところが、なんと顔を見て、やあやあ、と声をかけあったとたん、

まるで昨日まで会っていたみたいに、二人で喋りあっていた。

考えれば考えるほど、なんとも不思議な再会だった。

こうして、私の2025年が始まってしまったもので、

なんだか今年は、私にとって思いがけない年になりそうな気がしてならない。