¥東京に戻ってきて、そろそろ一年か…と思うと、妙に感慨深い。
忙しくしていたせいだろうか、
この一年はとりわけあっというまに日々が過ぎ去り、
気がついたら、もう年の瀬を迎えていた。
日々の過ぎていくその速さにはなんとも言いようのない感慨を覚える。
そもそも「なんで私は、六年前にいきなり那須町に移住しようなんて思って、
それを実行しちゃったのかなあ」とも思う。
ともあれ、
それらの暮らしに今度は、いきなり終止符を打った。
そして、気がつくと東京の家に舞い戻って、一人暮らしを始めた私がいる。
そもそも、自分の家は息子の家族に明け渡したつもりでいた。
ところが、結局は誰も住まない。
それで、ついに私が東京に舞い戻って暮らすことになったのだ。
暮らしてみると、
共に暮らした父や母の記憶が残されているそこは、
それだけですこぶる居心地がいい。
なんだかあたたかい。
そして、懐かしい。
あなたのいる場所はここよ、と言われている気がする。
いろいろあった旅の苦難を潜り抜け、ようやく帰ってきた、という感じか。
年を重ねてだんだん心身が衰えてくると、
一人でぼーっとして暮らしていられるっていいもんだなあ、と思う。
誰もなにも言わないけれど、親しい者たちに包まれているような安心感がある。
この家に最近、息子が週に一度か二度、安否確認とやらで顔を出すようになった。
「安否確認」と言われると、なんだか苦笑してしまうのだけれど……。
先日は、彼に殊勝な顔で言われた。
「病院に行くとかで、ついてきて欲しいとか、そういうことがあったら、
ちゃんとついて行くから」
ちゃんとついて行く!
それって、どういう意味?と聞き返したかったけれど、聞かなかった。
でも、そのとき思った。
「ともかく産んでおいて、よかったな……」と。