6年暮らした那須での日々に終止符を打ち、東京の家に戻ってきて、はや数か月が過ぎた。
相変らず、私は毎日、歩いて数分の近所のサ高住に出掛け続けている。
晩年の父や母が暮らしていたその懐かしい介護施設に、私もいずれは入居しようと思っているのだ。
が、とりあえず今は、毎日、夕食を食べに通うことにして、せっせと自宅とホームの間を行き来している。
時々、サボってはいるけれど、午後3時くらいから始まる「頑張らない体操」にも参加して、
身体を動かしたりの努力もしている。
時々、フラダンスの会にも参加して、踊ったりもしている。
そんな日々を送っているおかげで、「那須での暮らし」が、自分の中で次第に遠のいていく……。
今や、なんだかずっと前からこのホームで暮らしている、そんな気分だ。
私が目下、通っているのは、元気な八十歳以上の方たちが暮らしている自立型の棟で、
気がつけば、そこに入居している方たちと、あっという間に仲良くなってしまった。
ともかく、まだ七十代の私は「ここで一番若い人よ」と言われている……。
そのため、お茶会を定期的に開くなど、それなりにこのホームの人たちへの貢献につとめている。
先日、「五号館でもお茶会を開いて」と室長から頼まれて行ってみると、
ホームの元ヘルパー長だった人と再会した。
かつて入居していた父や母のサポートをしてくれていた懐かしい人だった。
元従業員でホームに貢献してきた人が、高齢になって、自分の働いていたホームに入居する……、
なんて温かい場所なんだろうと思った。
ここの入居者には、断然、女性が多い。
高齢になり、夫とか子供とか、家庭のあれこれから解放された人や、ずっとシングルだったという人たち。
みな、好き勝手に暮らしている。
楽しそうだ。
一緒に食事をするようになった入居者の一人は、独身を通したキャリアウーマ
ンで、麻雀の達人らしい。
彼女とご飯を食べていたら、
「今日は、雀荘で親しくなった仲間と麻雀やって、もうけちゃったわよ」なんて言ったりする。
地域の中にも麻雀友達を得て、日々、楽しくやっているらしい。
彼女のように、気に入った高齢者ホームを自分で探しだして、自分のお金で自ら入居する、
そんな住人たちが今や少なくない。
昔とはずいぶんとさま変わりした高齢者ホームの姿に、感慨深い。
そう、時代はこうしてどんどん変わっていく……。