「みとりえ那須」がオープンした。おかげで、私の那須暮らしも急変した。

暇さえあれば、車で10分ほどのその場所へ出掛けている。

ほとんど入り浸っているなあ~、という状態。

言ってみれば、実家みたいな感じ。そこにいるとほっとするというか……。

この場所を那須に移住してきて立ち上げたのは、看護師のサクマさんと

生活リハビリ研究所のボスとそのパートナーの彼女とボスの息子クン。

合わせて4人のチームだ。

私が彼らと知り合うことになったきっかけはイマイチはっきりしないけれど、

7、8年ぐらい前、「なぜ介護の仕事についたのか、百人の介護士に聞きました」というテーマで

取材に歩いていた時のこと。

東京の三鷹で「佐久間の家」という看取りの家を取材に行ったのだ。

その日のことは、よく覚えている。

普通の二階建ての家の階下の2DKスペースに、

5、6人の寝たきり状況の高齢者と看護師のサクマさんが住んでいた。

なぜか初対面の日、サクマさんが昼間からキッチンのテーブルでビールなどを

飲んでいた!

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやあ、昼間はさ、介護士さんが出入りしていてワタシはヒマだからさ」

なんて言いながら「この方をお風呂に入れてあげて」などと指示を出している。

それにしても……と思っていたら、夜になると、テーブルの下に布団を敷いて、

みんなの寝息にじっと耳を澄ましているとか。

高齢者は「夜、急変したりするのよ」と……。

びっくりした。

「家の中に自分のプライベートな場所ってないんですか?」と。

「プライベート? それって、なんぼのものか、っていう感じね」

サクマさんはそう言ったのだ。

とても私には、できない、と思った。

多くの人は、病院から「そちらでお願いできないか?」と、

「みとり」を依頼された方たちだという。

だから「なに食べたい?」と聞いて「ふぐちり」とか言われると、ふぐちりを作るんだそうだ。

さらに「ビールも飲みたいなあ」と言えば、ビールを出して、みんなで楽しく過ごすんだそうだ。

話を聞いていて、当時、介護の末に母を失ったばかりの私には、胸にこみあげるものがあった。

そんなサクマさんたちが、那須に移住して「みとりの家」を作ってくれたのだ。

部屋数は5室あって、しかもそこは居酒屋付き、というユニークさ。

毎週土曜日には、いろんな人がやってきて、美味しいおつまみでビールを飲む。

この縁を、この最後の場所を、大事にしなくてどうするの? と思う。

そう、私も「ここで看取られたいなあ」、そう思っている。