秋がどんどん深まっていく。
その中を散歩がてらのんびり歩いて「原っぱ」に出かける。
これが楽しい。
周辺の広々とした牧草地には、もう秋だというのに青々とした草地が広がり、
今年最後の刈り取りを待っているところだし、
その向こうに群生するセイタカアワダチソウの黄色が美しい。
思えば、このセイタカアワダチソウ、いつのまにかよその国から移住してきて、
わがもの顔に跋扈し始めた困りもの、とか言われている。
でも、那須の秋の広くて青い空のもとで見るこの草の黄色のなんとあざやかな
ことか……。堂々として、力強い。
同じく背の高いキバナコスモスが負けじとばかりに咲き誇っている。
これがまた強靭にして可憐。
緑の中のこれらの黄色は不思議に元気をかりたててくれる。
ともあれ、秋の「原っぱ」に一人で立っていると、
この一年、コロナ禍の中で、草を刈ったり、小屋を建てたり、ペンキを塗った
りして奮闘してきた日々が、懐かしいはるか昔の出来事のように蘇ってくる。
なんでこんなことに私は夢中になっていたんだろうなあ、としみじみしてしまう。
ともあれ秋の真っ青な空の下には目下、四つのガーデンハウスが立っている。
まずは、黄色と緑のだんだら縞の飾りがついたミニミニギャラリー、
ここには常設の小さな人形劇場を作る。
その前にはお茶を飲めるガーデンセットを置いたら素敵だろうなあ、と。
その横には、売店がある。
木製の正面シャッターには、トールペイントチームが五つののっぽの家々を描いた。
これが遠くからよく目立ち、なんだ、あれは? と人目を惹く。
車で出かけると「ねえねえ、原っぱの前を通って行こうよう」と言われる。
その度に、売店の絵を見ては、いいよねえ、と自画自賛し合う。
さらに緑のとんがり屋根が可愛いパペットハウス、
それから、「災害用トイレ使用練習室」と名付けた緊急用のトイレ、
松の木の下には、ただの草地の「原っぱ」劇場があって、スロープになっている土手には、
客席と称するベンチが並んでいる。
それら全体を眺めまわして「できちゃったなあ」と思う。
「ほとんど奇跡だわねえ」とも思う。
クリスマス前に、売店開店のイベントを開催する予定だ。
昔はいつも学級委員だったのよ、というメンバーが担当者だ。
会計係も会計監査も決定し、来春に公演予定の「原っぱ」人形劇の練習も始まる。
私は、一応、この公演の責任者なので、チラシを作り、町中にばら撒いて、観客を動員しなくちゃあ、
と、だいそれたことを考えている。
そして、これらすべてが一段落したら、部屋にこもって仕事を頑張って、
そろそろ真剣に老後資金をためなくちゃあねえ、と思っている。
そう言ったら、「ちょっと、今から? もう遅すぎない?」なんて言われたけれど、
ひとまずは、そういう「先のこと」は考えないでいよう、と思う。
どっちみち想定外なことばかりが起こる人生なのだから。
今は、ただただコロナウイルスが、
人間との戦いに飽きてしまってどこかへ行ってしまうことを祈っている。