三人目の孫娘が誕生して3か月目。
私が、那須に移住して10か月目。
最近は、息子の家族からSOSがくると、
東京の家に孫娘たちの面倒をみに出掛けていく。
それこれも、息子がどうも「子どもの頃から母に翻弄されて育ったボク」と
自分を位置づけているらしいので、
「母としての悔恨の情」を少しでも示していた方がいいかな……と思っているのだ。
育てた子どもにも、介護した親にも、それなりに尽くした人生だったつもりだけれど、親子の関係は当事者にとっても「謎」だし、昨今はすぐに「毒親」とか言われてしまう世相でもあるし……。
という次第で、生まれたての赤ん坊にいそいそと会いに行く私なのだが、
会うたびに赤ん坊の成長に驚かされる。
赤ん坊が育つのは、当たり前の話ではあるけれど、
わずか一週間でも間をおくと、その成長の速さにあっけにとられ、
いちいちが奇跡のごとく思われる。
先日などは、「こんにちは」とあやしてみたら、
いきなり赤ん坊がニコッと笑ったのだ。ちょっとした衝撃だった。
傍らにいた全員、5歳と8歳と赤ん坊の父と私が、
一斉に「笑ったあ!」と叫んだほどだった。
冷静な赤ん坊の母だけが「新生児微笑というんじゃなくて?」と、
キッチンの向こうから言った。
「違う、違う、そういうんじゃなくて、あやしたら笑ったんだよ」と、父。
念のため、この父が私の息子で、家で一番、文献派のはずの彼も、
わが子のこととなると体験派に変貌し、なにかにつけて一喜一憂する。
私が急いでネットで調べてみたら、
生後3か月を過ぎる頃から、赤ん坊は「社会的微笑」と言って、
自分に「ニコッ」とした人のマネをして「ニコッ」と返すようになるのだそう。
そうすると、みながとても喜んでやさしくするので、
次第に、この「ニコッ」の意味を学んでいくのだそうだ。
この経験がないと、
「ニコニコしない子ども」が出来上がっちゃうのかもしれないと思い、
他の孫娘たちに「いい、赤ちゃんには、いつもニコニコしてはなしかけてね」
と言っておいたりした。
思えば、さすがの私も、このニコッと笑う赤ん坊の誕生を知っていたら、
衝動的な地方への移住を思いとどまったかもしれない、と思う。
が、幸か不幸か、保育園児の下の孫娘も小学生になるし、
子育て援助も一段落よねえ、と思って移住を決めたのだった。
おかげで、会うたびに赤ん坊の著しい成長を
ドラマチックに眺める特権を得たというわけだ。
私のイメージとしては、孫娘たちにとって自分は、時々、
メリーポピンズみたいにあらわれる不思議おばさんを目指したいと思っている。
そんなつもりでいても、キッチンでお皿を洗っていたりすると、
学校から帰った孫娘からは、日常の連続のようにこともなげに言われたりする。
「なんだ、ばあば来てたんだ」とか。
同世代の孫育て体験者からは、
「今どきの子どもは10歳過ぎると、もうクール。思春期になると返事もしないわよ」
などとも言われたりする。
赤ん坊の「ニコッ」の微笑み返しは、人生のほんの一時の贈り物かも。
そういえば、子どもだって「3歳までに一生分の親孝行を済ませちゃう」
とも言われているし、こちらもクールな「ばあば」にならねばと思う。