秋から、いよいよ冬へ。
といっても、今年は「あっ!」と気が付いたら紅葉の季節が過ぎていた。
那須に移住して九か月目。
移住したばかりのこの土地での芽吹きの季節の美しさはあんなにもゆっくりとしていたのに、
木々の葉が色づいて散っていくのは束の間なのだと、思い知った。
寝室の窓辺のドングリの木に小さな実がなっているのを見つけて、小躍りしていたと思ったら、
もう、メインストリートでは枯葉が風に舞い狂っているではないか!
あれよ、あれよという速さだ。
食堂前の掲示板には、車のタイヤを冬用に交換しますよ~、という告知が出ているし、
夕食のメニューも、急に鍋物が増えた。
シェフが言うには、旅館で使う小さな鉄鍋を固形燃料であたためる一人用セットを
たくさん寄付してもらったのよ、とか。
おかげで、寄せ鍋とか白菜と豚肉のミルフィーユ鍋とか、もういろんな鍋物が出る。
「冬は、毎日、この鍋でいいよ~」という感じで、ついついお酒なども飲んでしまう。
そんなわけで冬支度は着々と進んでいるのだった。
先日も、ペレットストーブの燃料を一括注文します、というお知らせを郵便受けに見つけて、
「ペレットってなんだっけ?」と聞いてあきれられた。
私の部屋には、なんとイタリア製の高級ペレットストーブが設置されているのだ。
実は元住人の置き土産。
それをどう使うのか、事前に学んでおかねばならなかったのだった。
「これってね、飾りもんじゃないの、実用品なの」と、あきれられ、
焦っていたら、さっそくに隣人夫婦がストーブのお掃除方法などを懇切丁寧に指導してくれた。
おかげで、なんとか準備がまにあったという感じ。
思えば、この秋は、私はとんでもなく忙しかった。
三番目の孫娘が誕生して、東京方面からSOSが来たり、
チームで作った本の編集をみんなでやり切るという初体験もあり、
東京と那須を毎週のように行ったり来たり。
引っ越し荷物の整理もできていないまま、ずっと目まぐるしい日々が続いていたのだ。
おまけに今年は季節の方もめまぐるしかった。
朝晩がぐっと冷え込んだと思ったら、この冬支度のさ中に急に夏の陽気が舞い戻ってきたりで、
こちらの心身も一緒に右往左往してしまった。
ああ~あ、こんなふうに秋の感傷に浸るまもなく、落ち着きもなく、いきなり冬に入っちゃうわけ?
という感じが、まるで自分の晩年の人生を映し出しているように思える。
これ以上、とんでもない方向へと進んでいかないように、
この冬に心して軌道修正しなければと思っている。
というわけで、冬は冬眠することにした。
温泉三昧で暮らす、そう固く決心したのだった。