ついに、花粉症の季節が過ぎた。
なんとか今年もクリア、そう思ったら嬉しくて、一人で万歳三唱をしてしまった。
思えば、突然、私が花粉症に襲われたのは、四年前のこと。
それまでは、まったくの他人ごと。
世間には花粉にアレルギーを起こすような繊細な方がおられるのねえ、などと思っていた。
ところが、春風が吹いてきたらクシャミが止まらなくなった。
目がかゆい、鼻水がひっきりなし、頭も重くてどよ~んとした気分。
なにこれ? とうろたえていたら、
周りから「それ、典型的な花粉症」とこともなげに宣告されてしまった。
つらい間は、じたばたしてもだえていたが、
季節が過ぎたら、ま、一過性のものでしょう、とほとんど忘れて暮らした。
ところが、翌年も春風と共に花粉症がやってきた。
それも、とんでもなく重症。
前年にもまして苦しみ、クリニックに駆け込んだ。
それで、ついに思った。
春が来る度に、こんなにもうっとおしく苦しい思いをするのは、絶対、嫌だ、と。
それで、闘う決心をした。なにと? って、花粉症と。
闘いを開始したその年は、とりわけ花粉の飛んだ年だったのか、雑誌の特集やテ
レビの情報番組で、しきりと「花粉症」の特集がされていた。
それらの情報をもとに、
私は私の体質を花粉症に負けないものに根本から改善することにしたのだった。
その頃に流行っていたのが「腸内フローラ」。
人の腸内には、数百種、600兆個以上の細菌が棲んでいて、
種類ごとにグループを組んで群生し、
お腹の中がお花畑のようになっているのだという説。
善玉菌、悪玉菌、日和見菌と呼ばれる細菌たちで作られる腸内の
そのお花畑の姿は、人それぞれ。
みな違っているけれど、食事や生活習慣などで、
自分の「腸内フローラ」をバランスの良いものにすれば
体質を変えることができるのだ、と。
この「腸内お花畑」のイメージに、私は想像力を搔き立てられた。
できれば、わが内なる「お花畑」を清く、正しく、かつアートなものに変えたい、
そんな野心を抱くにいたったのだ。
かくして、一年、飽きっぽい性格の私が、
「腸内お花畑」の改善に向かって懸命な努力を試みたのだった。
善玉菌の餌だというヨーグルトを毎朝欠かさず食べた。
お砂糖を全部捨て去り、すべてをオリゴ糖に替えた。
毎朝、食物繊維たっぷりの野菜サラダをとり続けた。
さらに、花粉症に効果的だという酒粕入りの味噌汁も毎日飲み続けた。
生活習慣も大改革。
早朝、目覚めて働き、夜遊びなど決してしない。
まさに清く、正しく、美しくの日々……。
決心一つで、そういう日々を勝手に実践できるのは、
一人暮らしのたまものだ。
なにをしようと誰にも邪魔されない。
毎日、しつこく同じものが食卓に並び続けても、文句を言う人もいない。
と言うわけで、これまでには考えられないような日々を一年送ってみたら、
なんと春一番の風が吹いても、クシャミ一つ出なかったのだった。
今年は、その「腸内お花畑」作戦の二年目。
一年目に比べて、かなり気が抜けてきつつあったのが災いし、
クシャミが3日ほど続いた。
がっくりきそうだったが、それぐらいで、なんとかお花見の季節をクリアした。
いつ再発するかわからないので油断は禁物だけれど、
万歳三唱で気を引き締め、
今年も頑張ってみようかなあ、と思う。