読解力についての誤解

 

「読解力をつけるために本を読ませましょう」

「読解力をつけるために音読をさせましょう」

——こんなアドバイスをよく耳にします。

私も塾を開いた当初、同じことを言っていました。

読解力を育てる方法を知らなかったので、

常識と思われていることを言うしかなかったのです。

今は子どもたちの読解力を育てる方法を知っているので、

そうしたアドバイスがいかに的外れで、

偶然に頼ったものだったかがよく分かります。

実は、本をたくさん読んでいる子でも

読解力が育っていない子は多いのです。

学校の宿題ではたくさん音読させられているのに…。

もちろん、その事実にたどり着くまでには

いろいろなことを試しました。

耳からナレーションを聞きながら本を読む教材も試しました。

ナレーションを徐々に早めていく「速読聴」のトレーニングです。

2倍速、3倍速、4倍速と読むスピードは上がっても、

たくさんの本を読んでも、

読解力がない子は読解できない。

そんな当たり前のことが分かりました。

さらに、音読も試しました。

呟くような音読、大きな声で音読、

古典から現代までの名作の音読……

いろいろ試しましたが、

結局、子供たちはすらすらと読めるようになっても、

内容をまったく理解していないことが分かりました。

なぜ、たくさん本を読んでも、

(教科書の)音読を頑張っても、

読解力が育たないのでしょうか?

読解というものを、もう一度確認してみましょう。

読解…文章を読み、その内容を理解すること(大辞林より)

そう。読むことはできても、

理解できていないのです。

どれだけすらすら読めても、

情緒のある読み方をしても、

その内容を分かっていないのです。

分からないということは、

その言葉をイメージできないということなのです。

 

読解力を育てる方法

 

私の教室では、解き方を教わっていない文章問題を

ヒントなしで、全て絵にして解くという取り組みをしています。

以下は、長男が小3の3月に解いた問題です。
今日はろくろっ首のお菊さんとのっぺらぼうの大吉の結婚式です。日本の妖怪なのになぜか教会で式を挙げるそうです。2人の両親と友人の妖怪が教会の長椅子に座る時、3人ずつだと4人が座れず、4人ずつだと長椅子は3脚も余ってしまいます。教会には何人の友人が集まったと思いますか?

順を追って説明しましょう。

【解説】

解説850

①今日はろくろっ首のお菊さんとのっぺらぼうの大吉の結婚式です。

→2人が並んだ姿を描きました(緑枠)

②日本の妖怪なのになぜか教会で式を挙げるそうです。

→十字架と2人の脇にステンドグラスと下に長椅子を描きました(橙枠)

③2人の両親と友人の妖怪が教会の長椅子に座る時、

→2人の右のページに長椅子と2人の両親、友達を適当な人数描きました(青枠)

④3人ずつだと4人が座れず、

→3人ずつなのでのっぺらぼうのお父さんを右の長椅子に動かしました。

そして4人の友人が座れずにふてくされて鼻くそをほじっているところを描きました…笑 (赤枠)

⑤4人ずつだと長椅子は3脚も余ってしまいます。

→4人ずつにするために、座れなかった4人を1人ずつ長椅子に動かしながら(桃線)、

3脚余る状態(3人×3脚の9人を4人目として座らせる)まで絵を描き続けました(桃枠)

⑥教会には何人の友人が集まったと思いますか?

→友人を訊かれているので、両親の4人を数えずに人数を数えて

答 48人

解説450(筆者解説)

問題文は1回しか読みません。少しずつ文を読んだら絵にして、

また読んだら絵にしての繰り返しです。

1回読むだけで、深く理解する練習をするのです。

算数の文章問題も、国語の問題文も、

読解するときには基本的に頭の中で同じことをします。

言葉をイメージに変換し、そのイメージを文章に合わせて変形させるのです。

算数の文章問題は、

解き方を教わって式に数字を当てはめるのではないのです。

国語の文章問題は、

正解をとるためのテクニックを教わって解くものではないのです。

少なくとも、本当の読解力を身につける小学生の間は、

ゆっくりと、じっくりと、言葉をイメージに再現して、

再現した絵を変形させながら読む練習をする必要があります。

多くの子どもたちが受けている

「わからないときは何度も読みなさい」

「わからないときは声に出して読みなさい」

「数字に丸をつけ、足し算・引き算・かけ算・割り算とわかる言葉に線を引きなさい」

こうしたアドバイスは、残念ながら効果的な指導ではありません。

1回で深く読めるようになってから、

徐々に読むスピードが速くなるのが理想です。

深く読めないのに、読むスピードを上げてはいけないのです。