8月半ば、ついに終の住処へ引っ越した。

母がお世話になり、そして父もお世話になり、最期の時を迎えた場所。

いずれ私もと決めていたが、ひと部屋空きがでたと連絡があり、

この機会を逃すと、次はいつになるか分からないと言われて、

急きょ、引っ越すことにした。

部屋は8畳ほどの洋室で、シャワールームとトイレが付いている。

ベッドや下駄箱、小さな調理スペースもあるが、食事は食堂で出してもらえる。

だだっ広くて部屋数がムダに多い実家と比べると、快適そのもの。

引っ越しといっても、運んできたのは、

座り心地のよい椅子一脚とテーブルとノートパソコン、

本棚と衣装ケースと、そこに収まる本と衣類ぐらい。

そもそも実家から歩いて3分ほどだから、必要なものはすぐ取りに行ける。

でも、これ以上必要なものもあまりないような気もする。

人間、起きて半畳寝て一畳、なのだ。

で、実家をどうするか? という問題が残された。

息子と相談して、売ることは決めている。

そのお金で、ここの入居費を支払うことになっている。

そう、急いで入居したものの、入居金はまだ支払っていないのだ。

母がお世話になっているときに書いた本『母のいる場所』が結構売れて、

映画化もされたので、入居希望者が大勢やってきて、

「久田さんは功労者」ということに、ここではなっている。

だから、入居金は、実家が売れるまで特別猶予。

実家は豊島園駅からほど近い住宅街にあり、昔と違って今では人気スポット。

売却については問題ない、らしい。

家財道具の整理さえすませば、買い手はすぐ見つかるという。

父は転勤族で、北海道から九州まで引っ越しが多かったので、とくに大きな家具もない。

母が趣味で集めていた食器類などは、

ここで毎年開催しているバザーに寄付しようと思っている。

良いものが200円、300円で買えるから地元では人気で、

毎年大勢の人がやってくるから、これも問題なさそう。

そうなると、あとは、人形劇の道具類をどうするか? だけだ。

8年前に那須に移住するまで、私は仲間たちと一緒に人形劇の活動を続けていて、

その拠点がこの家だった。

練習も公演もこの家でやっていたし、かさばる道具類や人形たちの保管も。

だけど、私は人形劇はやめると決めたので、もう必要ない。

そこで、人形劇の仲間たちに「ほしいものは全部あげる」と連絡。

実家でランチを食べながら話し合うことになった。

で、結論はどうなったか?

引き取り手がなければ全部処分すると言う私と、

人形劇は続けたいけど、練習場所も道具の保管場所もない、

だから道具は引き取れないけど、人形劇は続けたい……と、堂々めぐりの仲間たち。

結局、名案は浮かばず、美味しいランチを食べて解散した。

終活で難しいのは、モノじゃなく、人それぞれの気もちかもしれないなあ…。

そんなことを思いながら小さな部屋に帰ってきたら、なんだかとてもほっとした。