■俳諧「奴凧」
お花畑見上げる岩峰木曽の山 佐藤 春生
姿見の背筋たしかめ浴衣着て 吉沢緋砂子
盆踊り音符のように笑み弾む 川上 壮介
七年のがまんを晴らす蝉時雨 勝 太郎
廃線趾鉄道草の愛おしさ 小林 今浬
かなかなや母息災の大あくび 松山 我風
■短歌「合歓の会」 久々湊盈子 選
百骸のひとつ傷めば人体はたちまち箍のゆるみたる桶おけ
《選者詠》
変形性膝の痛みの半生が現代医術の魔法にて消ゆ 木村 博子
夕つ方ひしゃく持て打つ水やりに風やわらかに頬を撫でゆく 天野 克子
苦瓜ひとつフェンスの溝に挟まれて四角に育ち四角に朽ちゆく 助川さなえ
胸ふかくうずきて消えぬ蛍火は十九の恋の死別の記憶 野口 貞子
ガチガチのあずきアイスにかじりつく急に真夏がやって来た午後
一戸喜久子
■川柳「暁子の会」 米島暁子 選
年金は増えぬが子孫増えている 《選者吟》
猛暑日に祖母を気遣う孫娘 血矢 行男
男には男の辛さきっとある 鈴木 綾子
目力にあしたがみえる孫の顔 花嶋 純代
炎天下アリも呟くアッツイな 中山 秋安
あ~暑いエアコン嫌いも兜脱ぐ 寺澤 秀典
明日を向き今日を呑み干すブランデー 髙橋 和男
もう朝だ汗ぐっちょりの目覚め嫌 板橋 芳子
昭和から令和へ男弱くなり 花島 和則
この頃の美肌男子は髭も無い 木間 弘子
■つれづれ句会 ― 投句 ―
ソーダ水今日ここまでと筆を置く 甲
しんがりの子は不機嫌や雲の峰
あれこれを止めて帰宅す炎天下 旦 暮
夕暮れに一際鳴くや木の陰に かもめ
時と距離始めと終わりは闇の中(眠れぬ夜に) 雅 夫
ご先祖に今朝も元気と手を合わせ (メキシコ)
いずも来て八雲八重垣サルスベリ
端座して涼風ぬける武家屋敷 お太助
折り紙遊び孫と過ごした盆休み
補助輪を取ったと笑顔汗に勝つ 佐藤隆平
新生姜良き香放ちて刻みをり 住 子
古民家のランチはパスタ柿若葉 裕 子
独り居の昼餉も楽し素麺食ぶ 節 子
夕映えや施設に入りし兄二人 かほる
梔子や無垢とは染まり易きもの 幸 枝
朝日受けお花畑の比叡山 晴 美
頑なこころ解けり花アカシア れい子
星座表片手に独り夏の縁 美智子
けやき路はじける子等とまつり笛
昼寝人ひるねびとタオル片手に大いびき 輝
外つ国の土に還りし弟の墓標の写真に手を合わす
ラベンダーの花穂は摘まずひたすらに蜜吸う蜂に株ごと進呈
風知草
流暢に問いに答えるAIにそうですかと思わづ返事
町祭り気もそぞろに連れ合いは出店めぐりぬ古希の少年
一 蝉
こぼれ種今朝十五咲かせ夏盛り
夕立や瓦を洗い茜雲 しげみ
また先の二人に戻る胡瓜揉み 火 山
朝採りの胡瓜に星のしずくあり 敬 直
秘境駅向日葵だけが鮮やかに 紀 行
父逝きてパナマ帽子のひっそりと 荘 子
風鈴の音の記憶に思いはせ 一 憲
向日葵や部屋まるごと黄に染める 彦いち
オカリナの響き軽やか夏燕 ちか子
サギ電話あるも拒こばめし夏の日々 光 子
暑過ぎるたたききゅうりの手に力 藍
遠き夏キャンデー売りやのぼり旗 美 公
向日葵の仰ぐ大空飛行雲 かおる
皺の手の戦中戦後越えて夏 恵美子
ポニーテール振り向く君に遠花火
麻パンツ刺繍をさしつ夏の午後 す ず
「うっせいわ」いっそ鎖国だと言いなさい(Adoリブ)
リップサービス本音がでての舌禍だよ 沖 阿
■莢さやの会 ― 投稿 ―
散歩 東 恵子
あなたの姿を誰も見ていない
あなたの声を誰も聞いていない
けれども 木曜日の真昼 ピンポン ピンポン
繰り返し ドアチャイムが鳴った
どなた? どんなご用件? シーン シーン
翌 金曜日 早朝四時……五時……また鳴った
繰り返し 繰り返し うす暗闇の中で
身を縮め 嫌悪感がベッタリ 残った
どうする? 管理事務所へ行く?
「いや待て」
あなたは 東側から来たのか いえ
西側からやって来たのかも
残月は下弦の月 まだ 黄色く光って
私は 成層圏へ散歩に出た
断捨離 湊川 邦子
やっと 断捨離に取りかかった
ただ モノを捨て片づけるだけのことなのに……
中でも 思い出の品やプレゼントは
なかなか捨てられないでいた
タンスの片隅に白いマフラーが眠っている
若い頃 富士急ハイランドで
バッタリ 高校(九州)の同級生に出会い
びっくりしたことがあった
雪が降っていて寒い日だった
同級生は自分のマフラーを
サーッと私に手渡してくれた
「クラス会で又会おうね」と……
あの時の マフラーだった
思い出を振り返りながらの
断捨離は 楽しい時間になっている
自立? 永田 遠
誰かが作ってくれた電車に
涼しい顔で乗り込む私
誰かが作ってくれたエスカレーターに
むっつり顔で立ってる私
病院では黙ってマイナ保険証
これの仕組みもわからない
そして
……私は何をしてきたのか、と
自問しつつ道を歩く
周囲をいくら見まわしても
私によるものなど
どこにもない
そのうち急に腹が立ち
大きく口を開いたのだが
声ひとつ上げられないまま
炎天下で棒立ちとなる