■俳諧「奴凧」
湯河原や出湯の郷に梅香る 佐藤 春生
蝋梅の小さき香りや風に消ゆ 吉沢緋砂子
梅一輪輝く未来身を重ね 川上 壮介
からし菜のおひたしが良し笊一杯 勝 太郎
母の小言聞いてるふりだけ春一番 小林 今浬
有り丈の力をもって地虫出づ 松山 我風
■短歌「合歓の会」 久々湊盈子 選
片膝の不全をかこちいるうちに梅終わり桜前線通り過ぎたり 《選者詠》
知られたくなきことふたつ否みっつ惚けて口を滑らすまいぞ 荘司 幹子
きさらぎの青空に透く白い月手にとりなめれば溶けゆきそうな 助川さかえ
寒の夜は本を持つ手が冷たくて指先のない手袋はめる 木村 博子
見あげれば万朶ばんだの桜は空おおい古木なれども衰えみせず 野口 貞子
追い焚きを一、二度ならずくり返し芯まで浸る大寒の夜 天野 克子
■川柳「暁子の会」 米島暁子 選
晩学へ柳友がいて生き延びる 《選者吟》
これからも僕の心に君はいる 山崎 君代
雪こんこ赤いほっぺの児が帰る 藤ノ木辰三郎
青空に日本の国旗よく似合う 津田 健而
月一のサロンの仲間元気かな 谷畑 顕
ふる里が恋しくなるとアンコ餅 福家 昭惠
あの頃の一途の恋に苦笑い 桶谷 康子
盛り上げて足は出さない名幹事 髙橋 和男
半世紀愛も空気に同化する 吉田 貞恵
秋が過ぎ役目を終えた木の葉舞う 鈴木 綾子
少子化の今愛犬の七五三 関 玉枝
妻願う夫の健康だけで良い 中津 和子
■つれづれ句会 ― 投句 ―
仏にも石にも供へ冬の菊
手袋を折るかたちにひざに置いて 甲
梅香するかすかにかたむく北斗星
天晴れや子がも列なしよちよちよ 輝
米を撒きふくら雀の客を待つ
ひな祭り桃の代りに梅の花 しげみ
バーガーキングで遅きランチや春浅し
銀行の跡地に春の空ひろがる 旦 暮
春夕焼ゆっくり星にゆずる空 昌 恵
軽やかに風に遊ばる春ショール 住 子
芽キャベツの何やら嬉しシチューかな 裕 子
親友のごとく寄り添ふ春こたつ 節 子
春雪や生姜の効きし加賀の菓子 かほる
寝そびれてまだ治まらぬ春北風 幸 枝
春めきて明るいあすを思ひをり 晴 美
髪切って野梅咲く道帰ろかな れい子
蕗の薹ブローチの如庭の隅 美智子
おだやかに揺らぐ菜の花海光る 火 山
築五十吾子も巣立ちて梅開く 美 公
猫膝にうつらうつらの冬うらら 敬 直
大屋根にこぼれ咲きみつ紅梅花 光 子
まど開けて一服のお茶春を聞く 荘 子
故郷の君の憶い出薄紅梅 紀 行
お遍路や難所越えれば人情け 一 憲
老い梅や老い放題に老いんとす 彦いち
梅見とて話は咲くや老い自慢 藍
太宰府の梅花の宴しのばるる ちか子
奥津城の梅ほっほっと空翔ける かおる
強風に蕾の梅や震えおり 義 明
路地裏の連理の枝に紅白梅 恵美子
桜と夕陽競って輝き明日も晴れ
浅草に傘は野暮だぜ春の雨 佐藤 隆平
早春の香り懐かし黄水仙今年も摘みて母に手向けん 風知草
立ちすくむ我に寄り添い歩む女ひと冷えし指に手の暖かき
俗に言う丑三つ時に目覚めれば人恋し聞く深夜のラジオ 一 蝉
米寿超え一年無病で春迎え 雅 夫
異常気象真冬のメヒコに真夏日が (メキシコ)
*真冬のメキシコの数か所で気温40度を記録しました。
合唱祭歌うチームの笑顔かな
歩くこと構わぬ八十路寒椿 卯 月
新スマホ自撮り試して老いを知り
フジテレビまたやりそうなドッキリを 沖 阿
■莢さやの会 ― 投稿 ―
来た! 行ってしまった 東 恵子
水たまりにも 所 番地がある
晴れの日が続くと そこがどこか
凹くぼみさえ見つからない
ふきんしんきわまりないことだけど
待ちどおしいのは 通り雨
大型テンポの脇道に 水たまり
そうよ 水たまり
たっぷり 広がって
青い空が白い雲をつれて 来た
風がほんの少し渡って 小波さざなみだつ
幼子おさなごの三輪車がさしかかって 途中
べそをかく
自転車に乗った少年が ヒューと
両足をひろげ なんなく通過する
青空をけちらし はぐれ葉をふんで
買いもの客は 小さく驚いて
行ってしまった 街は平和
ゼラニウム 湊川邦子
ゼラニウムの
赤 白 オレンジ ピンク
ベランダで競いあうように 蕾 蕾 花 花
去年は夏の暑さで根腐れしてしまい
悲惨な状態だった
サッサと引き抜こうかと迷ったが
それでも見守りながら
水やりを続けた
半年後
何と ゼラニウムは 蘇ったのだ
赤 白 オレンジ ピンク
はからずも ゼラニウムから
大切な何かを 教えられた気がする
白日夢 永田 遠
地獄の犬ケルベロスみたいな猛獣どもが
ウロウロしている檻の中、あれッ
いっぱい転がっているのは何?
透明なカプセルみたいな?
覗き込むと……
お父さん、お母さん、兄弟姉妹、
学校の友人、職場の同僚、
恋人、夫婦、子ども、孫、
車、レストラン、遊園地……
一切合財が詰まっていて、あッ
これは私たちの人生なんだ
||それにしても、恐ろしげな獣たち
毛むくじゃらの前足で
カプセルを転がしたり
牙の口で噛んだりしている
どうか、カプセルが割れませんように!
あれッ、またデカい奴が現れたぞッ
神様、どうか助けてください!
実習生 ユ ニ
実習生「向こうで友達が君のことを呼んでいるね」
A君 「………」
実習生はとても疲れてみえるA君の様子が気になって いる
「もし嫌だったら、そう言っていいんだよ、ここで
四つ葉のクローバーを探そう」
A君 「でも三つ葉ばっかりだよ」
実習生「だから探すんだろう」
A君 「今は行かな ||い」
A君が返事をすると、つまらなそうにしている友達
実習生は「嫌」と言えなかった子供時代を
改めて振り返っていた