那須の高原での暮らしに終止符をうち、
空き家になったままの東京の家に戻ってきて、もう一年あまりが経過した。
この一年、なかなか落ち着けずにいた。
とりあえず安心して暮らせる「サ高住」から、一軒家での一人暮らしに逆戻り。
もう後期高齢者と呼ばれる年齢になっているというのに……。
こういう私って……いったい、なんなんでしょう?
自分でも理解不能なこの放浪気質。
早くなんとか卒業して、日々、落ち着いて人生の晩年を一人で静かに生き切るようにしなければと、
いつも何か焦っているような、何かに追われているような……ずっとそんな気もちでいたのだ。
でも、いったい何を焦っているのだろう?
さすがに、もうしみじみ疲れてしまった。
するとようやく、ここが私の終着駅、という思いがしてきた。
誰にもなにも言われずに、一人で気ままに暮らすこの生活を、できるだけ続けていきたい。
もうどこにも行きたくない……。
そう、ここがいい。
母の介護をし、父の介護をし、出ていきたくても、出ていけなかった家。
だけど、その家が、晩年の自分を守ってくれるかけがえのない家になったのだなあと思う。
父や母と暮らした思い出の家は、結局、私に一番しっくりする場所なのだ。
そんなふうに思うようになったら、荷物だらけで収拾のつかなかった家の中を、
片づけようという気もちになってきた。
時間はいくらでもある。
だから、毎日、少しずつ、少しずつ……。
ゴミを出せる日は週2日、ビニール袋に最大3袋まで。
長年暮らしてきて、いまさらながらそのルールを確認している自分にあきれつつも、
不要なものは処分して、「少しずつ」ルールを実行しはじめている。
これを続けていけば、いつか家の中は見違えるようにすっきりするだろう。
そうしたら、友人たちに声を掛けて、昔のように「お茶会」を開こう。
人形劇だってできるかもしれない。
窓から差し込む春の日ざしを眺めながら、そんなことを考えはじめている。