今年は、とんでもない酷暑の夏だった。

それでも高原の夏は、朝晩だけは涼しかった。

家の窓も玄関も開け放して眠る解放感を存分に味わったし。

そこが、みんなで暮らすコミュニティのいいところよねえ、

と思うが、昔は都会でも夏はどこの家も開けっ放し状態だった……。

そんなさ中、である。

お盆休みに息子の家族がやってきた。

夫婦と9歳と7歳と生後11カ月の孫娘たち、総勢5人が……。

高速道路の渋滞を避けるためとかで、到着したのが深夜の12時。

途中、電話が来て「夜中につくから、布団敷いといて」だって。

実は、那須のコミュニティにはゲストルームがある。

二階のこの部屋から見える景色が実に美しい。

私は、取材に来てこの部屋に泊まり、

思わず「ここに入居します!」ということになったくらいだ。

それゆえ、季節の良い時期は見学者や入居者の家族や友人たちがひっきりなしに訪れて、

ゲストルームは予約がいっぱいになる。

だから、東京の暑さが最悪だから、そっちへ行く、といきなり言われても、

ゲストルームは空いていない。

そう告げたら「べつに、いいよ、お母さんの部屋で」と。

「べつにいいよ、と言われても……」と考えるまもなく、

優雅に那須の夏を一人満喫して暮らす私の小さな木の家に、

なんと家族全員がやってきて、ぎゅうぎゅう詰めで過ごすこととなった。

私のセミダブルのベッドに2人、

納戸仕様の3畳ほどのスペースに布団二組を敷いて3人、

キッチンにもう1人……、という満員御礼状態の三泊四日。

それでも、若い彼らはなんのその。

早起きして温泉へ出かけ、行きつけの森のカフェで優雅に朝食。

その森で、子どもたちはブルーベリー摘みをしたり、

昆虫網を手に蝶々を追いかけたり、

森林の牧場に出掛けて絶品のソフトクリームを食べたり……。

その合間、合間に、叱ったり、叱られたり、喧嘩したり、叫んだり、すねたり、泣いたり、はしゃいだり。

こちらは、特別なにかをしたわけではないけれど、

そのエネルギーの固まりみたいな家族のさまを眺めているだけで、ヘロヘロになった。

そして深夜のこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狭い部屋に折り重なるようにくっつきあって眠っている彼らを、やれやれ、と思いながら、

あっちからこっちへと誰かを踏みつけて起こさないように慎重にまたいで移動していたら、

唐突に、そう唐突に、蘇ってきたのだ。

昔々、四畳半一間とか六畳一間とかの狭いアパートで、一人、

幼い子どもを大変ともなんとも思わずに育てていた若かった自分の姿を。

思えばよくぞ、はるばるここまで来たものだ。

そう思ったら、うっかり号泣しそうになってしまった。

ともあれ、お盆休みの里帰り場所が、母の住む地方の高齢者住宅だなんて、

なにやら新時代家族の幕開けか。

これって、これからの家族のトレンドになるかもしれない、と思った私だった。

「今度は、紅葉の季節に来ようかあ」

そう言いながら、彼らは灼熱の戦場のような都会へと帰っていった。