虫歯を治療中ですが、お医者さんから「神経を抜きましょう」と言われました。まだ乳歯なのにそこまでする必要があるのでしょうか。神経を抜くとどうなるのでしょう。永久歯に影響はないでしょうか?(38歳主婦 /4歳男児)
歯は一番外側のエナメル質と、その内側の象牙質という硬い組織に囲まれて、
内部に『歯髄』という柔らかい組織があります。
歯髄は一種の結合組織の塊で、
その中に血管と神経が分布しています。
俗に歯の神経といわれているのは、歯髄のことです。
歯髄組織は一本一本の歯に固有のものです。
ですから「乳歯の神経を抜きましょう」といわれても、
これから生えてくる永久歯の神経や隣の歯の神経まで、
芋づる式に抜けてしまうということはありません。
エナメル質・象牙質などの硬組織にとどまる虫歯の治療は、
細菌に感染して軟化した部分を取り除き、
失った部分を人工物で補うというもので、
原則的に乳歯も永久歯も変わりありません。
乳歯でも歯髄まで細菌感染が波及した時は、
永久歯とは治療法に若干の違いはありますが、
歯髄治療が必要になるのも同じです。
エナメル質・象牙質という硬組織と比較して、
歯髄は結合組織という柔らかい組織なので、
細菌が侵入するとあっという間に歯髄全体に感染が波及します。
細菌感染によって歯髄に炎症が起こると
激しい痛みを伴って歯髄全体が壊死してしまいます。
歯髄が壊死すると一時的に痛みは治まりますが、
放置すると歯髄内の細菌は根の先端から出て歯根のまわりに炎症を起こし、
歯肉におできのような膿の出口ができることがあります。
さらに、乳歯では
すぐ下の永久歯胚(永久歯の芽)の発育と萌出に悪影響を及ぼすこともあります。
乳歯だからこそ、確実な歯髄治療をしておく必要がある、とも言えるのです。
できてしまった虫歯に自然治癒はありません。
早期発見・早期治療が一番大切です。
歯髄治療が必要になる前に見つけて治療できるように、
定期的に検診を受けられることをお勧めします。
★回答者……
1953年東京都生まれ。1979年、北海道大学歯学部卒業。
北海道大学歯学部小児歯科学講座入局。1984年、新松戸
で「小児歯科ポプラ診療室」を開業。日本小児歯科学会認
定小児歯科専門医。