私の部屋が、目下、すごいことになっている。
もともと散らかってはいたのだけれど……
今はもう手が付けられない状況と化している。
それもこれも、5月半ばにやれたらいいね、
ということになっている「原っぱ人形劇」の人形たちでいっぱいなのだ。
キッチンのテーブルの上には、
5匹のカマドウマが長いバッタ足をからませあっている。
これ、通称「便所コウロギ」なんて呼ばれている連中で、
人形劇では原っぱダンスを踊る予定だ。
テーブルの下から赤い舌をちょろちょろさせているのはラメ入りの青いヘビ。
大量のスズメバチが、お菓子の空き箱にあふれているし……。
ほかにも、革製のカメムシが大小、対でいる。
これは革のクラフト制作ン十年の入居者仲間が作った。
「こういうカメムシのブローチが欲しい」と言いたくなるほど素敵。
実は、私の部屋には四畳ほどの納戸スペースがあるには、ある。
けれど、そこには東京から運んできた人形劇の舞台や幕や衣装や布や資料で、
すでに満杯状態。
行き場がないもので、部屋中がヘンな虫たちに占拠されているのだ。
本職の仕事の方は、目下、私はベッドの上なんかでやっている。
テーブル代わりのノートパソコンを置いて、寝そべって原稿を書いてたりする。
それもこれも、もとはと言えば私のせい。
処分する決心がつかないまま、NPOの人形劇団をやっていた時の荷物を全部、
那須までトラックで運んできてしまった。
思えば、那須に移住を決めたとき「なぜ、ここに?」と聞かれて、
つい口走ったのが仇となった。
「森の中に住んでいる人形劇のおばあさんになりたい」なんてことを。
「ならば、那須は最適です!
廃校小学校の教室を借りたら、人形劇場になりますよ~」
なんて言われてうれしくなった。
ところが、そううまくはいかなかった。
で、成り行きで近くの「原っぱ」を借りて、野外で人形劇をやろう、
ということになったのだった。
そして、この「原っぱ劇場」に台本を提供してくれたのが、
サカタさんという人。
彼は、わが高齢者住宅のスタッフで、自主運行する車の運転手をつとめている。
他にもテニスコーチなど、いろいろなことをやっているらしい謎の人。
その彼が、敬愛する昆虫ばかりを登場させる台本を書いてくれた。
おかげで、終活、終活、と言われる年頃になった私が、
シンプルであるべき小さな部屋に、
こうしてヘンなものばかりを増やし続けているのだった。