那須に移住したのよ、と言うと、

「ええっ、その年で、勇気あるねえ」と言われたりしている。

でも、中には

「ええっ、年をとって移住するならフツウ南だろう、

なんでキミは北なんぞに向かうのだ。気が知れない」っていう人もいた。

そういう人に対しては「森に囲まれて暮らすシアワセを知らないのね」

と相手にしないスタンスをとっていた。

けれど……

確かに、冬を迎える準備をあれこれしていて気が付いた。

これって結構大変だなあ、と。

家の前に、どんと置かれたペレットストーブの燃料を

いくつも部屋の中に運んだりしなければならない。

車の冬用タイヤの交換のため、ひとりで重いタイヤを交換場所へ持ってきたり、

保管場所へ持っていったりしなければならない。

そう、なにかと力仕事が多いのだ。

私は、基本的には「自己完結して生きる」をモットーにしているので、

一人で頑張ってはいるけれど、那須に来て、

自分は驚くほど軟弱でなんにもできないしょうもない女なんだと自覚しつつある。

そもそも、私の移住した先はサービス付き高齢者住宅だけれど、

基本は自立自助。なかなか厳しいものがある。

スタッフには、女一人で森の中のログハウスに暮らしていて

「今、庭に東屋を造ってんのよう」などとこともなげに言う人もいる。

「ねえ、自分で木も切るの? 薪も作るの?」と聞けば、

「そんなのあったり前じゃないのよ」と言われる。

同じサ高住に入居してきたものの、

こんなところに居たら、木も切れなくて、小屋も作れなくて、退屈すぎる、

そういって近くの森の古い別荘に住み替えてしまった夫婦もいる。

先日、遊びに行ったら、

夫は嬉々として木を切り、薪を作り、広いウッドデッキを新しく造り直したりしていた。

春になったら、ここでバーベキューをやるよ、と言われた。

そして、妻はパンを焼いたり、手編みの素敵なセーターを編んだりして、

なんかすごくいい感じでうらやましくなった。

夫の方は団塊世代で私と同い年だが、

なにかと「俺ら、仲間だろう!」と熱く語る。

私は「歳が同じだけでは、仲間とは言えない」なんて言っている。

その彼が言う。

「近くに引っ越して来たら薪ぐらいは作ってやるし、手伝ってやるから」と。

その時、ふと思った。

もしかしたら、私、人生の選択を間違ったのかもしれない、と。

思えば、ずっと将来は森に住む人形劇のおばあさんになりたいと、夢見続けていたのだから

木を切れたり、薪を作れたり、小屋を建てたりできるたくましい男を伴侶として選ぶべきだったのだ。

なんで、こちらばかりが働いて養い続けるような男とばかり親しくなったりしていたんだろう、

と思う。

それを嘆くと、今からでも遅くない、とみんなが言ってくれたけれど、もう遅すぎる。

それだけは確かなことだとしみじみ思う。